魔術師協会日本支部の受付のある1日
俺は、賀茂 清瀧。魔術師協会の日本支部で受付のバイトをしている高校生だ。親のコネでここでアルバイトをしている。まぁ、ただの受付なのでコネというよりは、たまたま手が空いていた俺がさせられている、といった方がいいかもしれないが。まあなんにせよ、俺はここで働いている。
それはいいとして、今日の予定はない。そう、仕事がない。そらそうだろう。魔術師を頼るような奴なんかそうそういないんだから。というか、この日本支部の場所は魔術師協会の組合員ぐらいしか知るはずがないので、普通に来客があれば困る。だって、秘匿している場所がばれてしまったことを意味するのだから。なので、受付という仕事はただのお飾りで、要するに見栄えの問題でこの仕事があるに過ぎない。実際に受付がいなくて困るようなことはない。だから、ただの高校生でも問題ない訳だ。
さて、今日はどうやって時間をつぶそうかな。あっ、そうそう、せっかく魔術師協会にいるんだから魔術師について少し調べてみよう。
そうそう、この協会のネットワークは物理的にも外部に接続されていないので、世界中にある魔術師協会の支部と本部にだけつながっている。だから、ハッキングや内部情報の流出については考える必要がほとんどないので、そういった事に対してほとんど対策されておらず、協会の内部にいれば簡単にいろんな情報を手に入れることができる。ただし魔術関係限定だが。だから、魔術師についてどころか、魔術師として活動している人の個人情報も見ようと思えば見ることができるのだが、あいにく個人には興味がない。ただ、魔術師は兼業の人が多いようだ。なかには、どこぞの研究機関に勤めている人もいた。科学者なのに魔術師って相反していると思うがいいのだろうか? まぁ、かくいう俺も高校はガチガチの理系だが。ちなみに俺の父も、工学部卒業で仕事先はどっかの企業の製造部門と、魔術師としての活動だった。最近の魔術師っていうのは意外と理系が多いらしい。
おや? 誰かが来たようだ。しかも、正面玄関から入ってくるぞ? 誰かは知らないが、今日は何の予定もなかったはずだし、出入り口がばれたかな? ばれた場合、色々まずいことになるので、一応警戒しておこう。そうそう、ここは魔術を扱う人がいる関係で、色々とまずいもの ―例えば大麻とか― を保管しているらしいので、一般の人が入ってきた場合いろいろと問題になる。一応役所には届け出をしているし、研究目的の所持で通しているらしいが、まあそんな事を知らない人もいるわけなので、バレないに越したことはない。
誰かと思ったら、協会の本部の人だった。身内でよかった。とはいえ、わざわざ本部から何の用だろうか?
えっ? 俺? なになに? すいませんでした!
そういえば、就業する際に書く誓約書を提出していなかった。そりゃあ本部から人が来る訳だ。
そうこうしていたら、就業時間が過ぎていた。