第六話 弱いものいじめの無双
ヤドリギを出て森に入った。
まずは世界樹から出ないといけない。世界樹の中央へ行く。
方角はメニュー魔法でわかるので迷う心配は一切ない。
森の中をゆっくり行っても良いが少し急ぐ。
長い間森で過ごしたくないというのもある。
狼のグリルを食べる。変身!
そして狼になって駆ける。駆ける。
木々の間を縫い、岩を飛び越えて進む。
排水溝みたいな匂い。
臭い。
この匂いはゴブリンの血か?
メニュー魔法の『並列自動思考』とマップを観測者モードに切り替える。
観測者モードは大気中魔力の観測と、音の流れを中心に判断するモードだ。
他にも色々ある。
そのうち使うだろうしその時に説明しよう、
今は匂いの方へ向かう。
剣狼とかいたらヤバい。
不意打ちされればもっとヤバい。
いるなら先に発見するに限る。
浄化で身体の匂いを消して、隠れながら進む。
本当なら体内魔力を0にしてから行く方が隠密性が高いのだが、身体能力が下がる上に魔法が使えないので全然戦えなくなる。
そうなったら死に戻り確定である。一日目で死にたくない。
あったゴブリンの死体だ、剣狼はいなさそうか?
いるならゴブリンの死体消されてるだろうし。
それならいいが、何処にでも湧いて、強い上に数が多くて仲間意識も強い剣狼ほど厄介なものは無いし、それ以外ならどうとでもなるだろう。
邪神以外なら。
『4つの敵性魔力反応を確認。大きさはユーザーの半分未満と判断』
半分未満で4体なら余裕か。
マップ見るに結構距離あるし、先手を打とう。
10秒かけて変身を解き、『体内収納』から服を出して着る。
距離はまだあるし、気づいてなさそうだ。
『並列自動思考』の照準補佐が開く。
魔力を循環させて白と黄の二色に変換。
突き出した右の手のひらに込める。
声に魔力を乗せ、詠唱。
「【四条に分かれる白き雷よ!刹那のうちに敵を討て!】」
瞬間、空気を破裂させる音を静寂な森の中に響かせて雷光が走る。
あ、黄色入れたから音鳴るじゃん!白だけにすれば良かった!
『着弾確認。魔力反応の消滅を確認しました』
『今の音に誘われたのか、大量の魔力反応を確認しました』
やっぱ来るよね、やっちゃったよ。何来るかな?
『魔力パターンにより、竜と推測されます』
大量の竜……なんだ?
『黄闘竜の子供だと思われます』
子供かぁ……歴史が薄すぎて全く経験値にならないんだよね。
生きた歴史が経験値になるから子供は不味い。生まれた時から最強の種族とかいたとしても、倒しても経験値がすごく安い。
老人かレベルの高いやつが美味しいのだ。
『魔力反応が巨大化。敵性反応全てが魔法構成に入りました』
黄色の魔法なら無視していいだろう。
雷耐性は高いし。このまま突っ込んでぶっ飛ばす!
両足両腕で地を掴んで駆ける。
その一瞬後に視界が黄色に染まり、全身を軽く痺れが突き抜ける。
が、無視してそのまま駆ける。見つけた。
黄色の前足が太くなって、コウモリのような翼が生えているトカゲのようなものがうじゃうじゃいる。
ぱっと見60匹くらい。
駆けた勢いのまま右腕を地面に突いて、全身を回転。
足に"気"を乗せて振るう。
斬撃が飛びトカゲが肉片と化す。
「きゅーあ!!」
太い前足に電流を走らせて飛びかかってくるので、『身体制御』を発動し、背中から剣を生やして突き刺す。
金属なので電流が身体を走るが構いはしない。
どんどん群がってくる。
飛びかかってくるトカゲをくるくると回転しながら殴り、爪で引き裂き、噛みちぎり無双する。
背中から生やした剣はそのままなので巻き込まれて何匹か引き裂いた気がする。
ノッてきたがもう数が少ない。
残りの数匹は逃げ出そうとするので見逃す。
経験値美味しく無いから美味しくなって帰ってこいよ、とエールを送りながら。
楽勝すぎて2分かかってない。
雷耐性ある時点で勝ったも同然なわけで、
狩ってる最中に食べたがコリコリしててササミみたいな味で美味しかった。死体も浄化して食べよ。
#浄化
魔力を放出して、いらないものを取り除き、綺麗にするイメージで発動する、消滅魔法。
白い魔力と黒い魔力が浄化をしやすい色だがどの色でも一応行うことができる。綺麗にする程度になるが。
この時代だと神が浄化を詠唱によって誰にでも使えるように世界方式を弄ってあるため、本当に誰でも使える。
汚いドブネズミみたいな猿でも声が出せたら使える。