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アルテマ・ソード  作者: チーズケーキ
異世界旅行編
4/5

第四話

 

 守るべき民の命は、手に届くことなく潰えた。


 手の先にあった物は、求める物ではなかった。


 望んでもいない地位に付かされ、挙句落とされた。


 手の先にある物は、私の望んだ物ではなかった。


 仕えてきた主に裏切られ、国の娯楽のために働かされた。


 手の先にあって欲しかった物は、求めても帰ってこなかった。


では何のために私はここにいる?私は何がしたくてここにいる?


 …私ハ、何ノ為ニコノ手ヲ汚シテキタンダ?



 ――――――



「では始めよう。騎士殿?」

【………】

「……むぅ」


 まだ日が高いとき、二つの人影が互いに向きあって佇んでいた。

 一つの影は漆黒の鎧の男、ジ・アース。彼は相手の方へ顔をむけながらも、黒い“剣”を握った腕はあくまで力無く垂らされている。

 相対するもう一つの影は、ブロンドの髪が美しい青年であった。その右腕には、細くも使い古された剣、『レイピア』が、まっすぐアースを捕らえていた。


 一触即発の空気。張り詰めるような時間が彼らとその周りを支配する中、その脇でもう一人、アースの主にしてこの場の立会人、異世界の住人友里恵が、二人を冷たい視線で見ていた。


 そもそも何でこんな事になったのか。それを何と無く思い返していた。



 事の始まりはつい先ほど。巨大な紫ゴリラを、アースが一撃の元、森の置くへぶっ飛ばしたすぐ後のこと。

 遠くから鳴るテンポのいい音が近づき、その音の主は、ゴリラが吹き飛んだ跡の脇から姿を現した。


 白い馬だ。

 まごうこと無き白。真っ白だ。その毛並みは日の光に照らされ、汚れの無い純白を見せ付けていた。何ていうか眩しい。


 もちろんそんな手入れの届いた馬なのだから乗り手もいる。姿を現したのは、まるで絵本に出て来る王子様のような格好だった。

 純白の服には金の刺繍が施され、また胸には勲章の様な装飾もキラリと輝く。


 腰には宝石をあしらった細い棒の様なものをさしており、その先端は不思議な形の金の取っての様な物が付いている。


 肩に掛かるブロンドの髪はまるで砂金のようにきらきらと光風になびき、その輝きは萎える事無く存在感をあらわし続けている。


 そしてその髪に包まれた顔は―――



「…………………アザラシ?」

【………】

「そこの者!!!そこを動くでないぞ!」


 そう友里恵達に声を掛けると馬から降り、カツカツと早足で近付く。


 目の前まで歩み寄ってきたアザラシは、以外に長身だった。それとも自分が身長が小さいからなのか、と何となく思いながら見上げて見れば再度


「…アザラシ」


 そう呟いていた。半ば反射的に、直感的に。なんだろう、もうそれ以外に見えなくなって来た。


「そこのお嬢さん。なんだか良く分らないがさっきから私に物凄く失礼な事を言っていないかね?」

「そう聞こえてたならごめんなさいアザラシさん。何かどうしようも無くあなたがアザラシに似てたから、ついアザラシと呼んでしまいました」

「…何か良く分らないけど何なのそのアザラシって。バカにしてるの?」

「そんな事はありませんよアザラシ。それとアザラシは馬に乗るのではなく海で泳ぐといいですよ?」

「なんか途中から『さん』が消えた気がするよ。てかまたアザラシって言った!私の名前はラムカナ―――」

「アザラシは何を食べるんだろう。魚かな?アース、魚採ってきてくれる?」

【わかった。少し川に行ってくる。だが、その生き物は川魚を食べるのか?】

「あ、それ忘れてた…。んー、大丈夫じゃない」

【承知した。ならほかの食料も一緒に調達してくる。何かあれば叫ぶのだぞ】

「ん、わかったよー」

「お前ら人を動物扱い!?私は今は魚なんて食べないけど!?あとそこの黒騎士殿も、無言で立ち去らないで!お願い!!!」


 アースの声が聞こえないような言い方をする。あぁ、これって念話なんだっけ?じゃあ話し相手も指定出来るのかな?それともアザラシだから聞こえないのかな?などと考える友里恵。


 涙を流しながら懇願するアザラシを尻目に、二人は顔をあわせてもう一度アザラシを見た。


 身なりは高貴の者が見に付けるそれ。質に良さそうな生地なので、かなりの身分のアザラシなのだろう。


 そんなアザラシが今、金色の髪の毛を振り回し地面に額をこすり付けている。何となく思ったのだが、コイツにはプライドが無いのかと心の中で呟く友里恵。


「…まぁ、とりあえず頭を上げてくださ―――」

「っふ!まぁ君が私が下げた頭をどうしても上げろと言うのなら仕方あるまい」

【………なぁ主、この者を一発ぶん殴って良いか?】

「誠に申し訳ございませんでした」


 拳を握り締めるアースを見て、気が付いたら額では無く顔面をこすりつけてアザラシは土下座していた。もうあれだな、プライドのプの字も無いのだなと友里恵は確信した。


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