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異世界といったら魔法のはずなのに

主人公に衝撃の事実が!

「おはようございます! お父さん!」

 俺はマリーの大きな声で目を覚ました。

 お父さんと呼ばれるのは少し照れくさいが、婚約者よりはいいだろう。

 マリーは俺の家に住むことになった。

 余っていた部屋をマリーに使わせたら、すっかり可愛い部屋になってしまった。


 この街は魔王が倒されてからというもののかなり平和らしく、裁判までに発展する揉め事はあまり起こらなかった。

 だが、俺には元の世界に戻る方法を探す暇はなかった。


「それでは、判事様からのお言葉です」

「ええー今日はお天気にも恵まれ、絶好の運動会日和となりました。皆さん全力を尽くして頑張ってください」

「はーい」

 幼稚園児たちが元気よく返事をする。

 判事様は判事としての仕事よりも、このようなイベントに呼ばれることが多かった。

 運動会は、野原で行われた。

 かけっこ、玉入れ、綱引き。

 元の世界とやることはそんなに変わっていないのに、玉入れのカゴは魔法で浮いているし、綱引きの綱は自ら逃げ出そうとしている。

 長い間異世界にいるうちに、魔法や街並みなど、異世界特有のものには慣れた。

 だがしかし……暑い! これは日本でもそうだったがただひたすらに暑い!

 こまめに水分補給をして休んでいるが暑いものは暑い!

 魔法で涼しくできないものかとは思うが、魔法が使える者でも、自分の他に二、三人くらいが限界なのだろう。

 園児たちは皆魔法をかけてもらえたらしく、涼しそうにしている。

 俺は暑い。しかし、園児たちの健康を守るためには仕方ない。

 ここはおじさんの俺が我慢しよう。

 額から汗が噴き出てくる。

「判事様は魔法、使わないんですか?」

 クレアが声をかけた。

 そうか。今の俺の体は「判事様」だ。魔法が使えたって不思議ではない。

「魔法ってどうやって使うんだ?」

 クレアに尋ねた。

「判事様には魔力があるのですから、普通に念じればできますよ」

 当然のことのように言う。

 よし、念じてみよう。

 涼しくなれ涼しくなれ涼しくなれ涼しくなれ涼しくなれ涼しくなれ涼しくなれ

 ……全然涼しくならない。

 体に力が入ったせいで逆に暑くなってきた。

「できない……」

 クレアが目を丸くする。

「そんなわけ無いじゃないですか。判事様は魔族を滅ぼしてきたんですよ? 私があなたの秘書として働いている間もたくさん魔法を使っていた。魔法が使えないなんて……もしかして、記憶と一緒に魔力も無くなってしまったんですか?」


 俺は俺だ。別に異世界に行ったからといって魔法が使えるようになるとは思っていなかった。

 だがほんの少し期待してしまっていた自分もいた。

 俺には異世界で遊んでいる暇はない。

 早く元の世界に戻る方法を探さなければいけないんだ。



 クレアは家に帰っている。

 彼女の家は、裁判所にある小さな秘書室。

 他に帰る場所などもうない。

 愛する人も、居場所も、全て魔王と勇者・判事の戦いで無くなってしまった。

 本当の私を愛してくれる人はどこにもいない。

 全て奪われてしまった。

 判事様は記憶をなくして、魔法が使えなくなってしまったらしい。

 今までずっと判事様のそばにいた。

 判事様は、私のことどう思っているんだろうか。


 虹色に光る芋虫のような生命体が彼女に近づいて行く。

「君も私と同じだね」

 クレアは静かに眠りに着いた。

 虹色に光る虫が、彼女を不気味に照らしていた。


次回もぜひ読んでください!

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