第34話 悪意と証明
1 疑念と選別
広間の空気は、張り詰めた糸のように冷え切っていた。
鎖で繋がれた百名のポルトス幹部たちは、石床に膝をつきながら互いに目を逸らしている。
その前に立つ王太子アウグスベルグが、静かに言葉を放った。
「お前達の中から一部の人間を解放する」
ざわめきが広がる。
(解放……だと?)
(罠に決まっている……)
疑念が幹部たちの間に渦巻く。
その時、ゼノヴァンの金眼が淡く輝き、声が低く響いた。
「……友よ。悪意の濃い者が三人いる」
指差された三人はぎょっとして顔を上げた。
一人は冷徹な眼差しで兵を切り捨ててきた男。
一人は己の欲望に忠実な愚か者。
一人は貴族の嫡子を名乗り、常に民を侮蔑していた若者。
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2 遠見の魔法
王太子が冷ややかに告げた。
「この三人を特別に解放する。ただし条件がある」
「ハイデニアに悪意を抱き、実行した瞬間――心臓が爆ぜる。死の痛みが一瞬で済むのは、むしろ救いかもしれぬがな」
幹部たちの背筋が凍り付く。
リディアが一歩前に進み、魔力を紡いだ。
「……これは“遠見”の魔法です。三人の様子を、この場に映せます」
淡い光が広がり、上空に水面のような巨大な映像が浮かぶ。
それは捕らわれた幹部全員、そして広場に集まった国民にも見えるように繋がっていた。
(……国民までもが見ている……!)
(これでは一切誤魔化せぬ……!)
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3 一人目
牢獄とは別の小部屋で、一人目の縄が解かれる。
男は一瞬ためらったが、床に置かれていた剣を見つけた瞬間に飛びついた。
「今だ、殺してやる!」
その叫びと同時に、胸が赤く光り――爆ぜた。
「がはっ……!」
断末魔とともに崩れ落ちる姿が、遠見の映像に大きく映し出される。
幹部たちは息を呑み、国民たちは固まった。
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4 二人目
二人目は城門の外へ導かれた。
(くだらん脅しだ。俺は自由を掴む……)
だが、すぐ傍を通った若い女官の姿に目を奪われる。
欲望に駆られ、にやりと笑った。
「せめて一人くらい抱いてから帰ってやる……!」
女官の腕を乱暴に掴んだ瞬間――胸が爆ぜた。
「ぎゃあっ!」
女官は悲鳴をあげ、衛兵が駆け寄る。
広場では国民が怒号をあげ、幹部たちは青ざめた。
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5 三人目
三人目は城門を抜け、野営地を目指して進んだ。
(俺は違う……俺だけはやり遂げてやる……)
やがて野営地に到達。
見張りの兵士が驚きの声をあげる。
「軍団長殿!? どうされたのですか!」
三人目は胸を張り、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ハイデニアは――」
その瞬間、胸が閃光を放ち、爆ぜた。
「ぐはっ……!」
兵士たちは悲鳴を上げ、後ずさった。
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6 王太子の断罪
映像が消え、再び広間に静寂が訪れる。
その後すぐに、リディアが新たな魔法を紡いだ。
「……これで広場に集まった国民の姿も、共に映せます」
映像が切り替わり、幹部たちの視線の先に、怒りに震える民衆の姿が映し出された。
彼らの鋭い眼差しが幹部たちを突き刺す。
王太子は冷然と告げた。
「お前たちが我が国の民に“尊厳を踏み躙れ”と命じたことは、すでに裏を取ってある。ならば俺は言おう。お前たちの尊厳は――俺が踏み躙る。それが平等だろう?」
幹部たちは息を呑み、膝を震わせ、やがて項垂れた。




