表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/42

第34話 悪意と証明

1 疑念と選別


 広間の空気は、張り詰めた糸のように冷え切っていた。

 鎖で繋がれた百名のポルトス幹部たちは、石床に膝をつきながら互いに目を逸らしている。


 その前に立つ王太子アウグスベルグが、静かに言葉を放った。

「お前達の中から一部の人間を解放する」


 ざわめきが広がる。

(解放……だと?)

(罠に決まっている……)


 疑念が幹部たちの間に渦巻く。


 その時、ゼノヴァンの金眼が淡く輝き、声が低く響いた。

「……友よ。悪意の濃い者が三人いる」


 指差された三人はぎょっとして顔を上げた。

 一人は冷徹な眼差しで兵を切り捨ててきた男。

 一人は己の欲望に忠実な愚か者。

 一人は貴族の嫡子を名乗り、常に民を侮蔑していた若者。



2 遠見の魔法


 王太子が冷ややかに告げた。

「この三人を特別に解放する。ただし条件がある」


「ハイデニアに悪意を抱き、実行した瞬間――心臓が爆ぜる。死の痛みが一瞬で済むのは、むしろ救いかもしれぬがな」


 幹部たちの背筋が凍り付く。


 リディアが一歩前に進み、魔力を紡いだ。

「……これは“遠見”の魔法です。三人の様子を、この場に映せます」


 淡い光が広がり、上空に水面のような巨大な映像が浮かぶ。

 それは捕らわれた幹部全員、そして広場に集まった国民にも見えるように繋がっていた。


(……国民までもが見ている……!)

(これでは一切誤魔化せぬ……!)



3 一人目


 牢獄とは別の小部屋で、一人目の縄が解かれる。

 男は一瞬ためらったが、床に置かれていた剣を見つけた瞬間に飛びついた。

「今だ、殺してやる!」


 その叫びと同時に、胸が赤く光り――爆ぜた。

「がはっ……!」

 断末魔とともに崩れ落ちる姿が、遠見の映像に大きく映し出される。


 幹部たちは息を呑み、国民たちは固まった。



4 二人目


 二人目は城門の外へ導かれた。

(くだらん脅しだ。俺は自由を掴む……)


 だが、すぐ傍を通った若い女官の姿に目を奪われる。

 欲望に駆られ、にやりと笑った。

「せめて一人くらい抱いてから帰ってやる……!」


 女官の腕を乱暴に掴んだ瞬間――胸が爆ぜた。

「ぎゃあっ!」

 女官は悲鳴をあげ、衛兵が駆け寄る。


 広場では国民が怒号をあげ、幹部たちは青ざめた。



5 三人目


 三人目は城門を抜け、野営地を目指して進んだ。

(俺は違う……俺だけはやり遂げてやる……)


 やがて野営地に到達。

 見張りの兵士が驚きの声をあげる。

「軍団長殿!? どうされたのですか!」


 三人目は胸を張り、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「ハイデニアは――」


 その瞬間、胸が閃光を放ち、爆ぜた。

「ぐはっ……!」


 兵士たちは悲鳴を上げ、後ずさった。



6 王太子の断罪


 映像が消え、再び広間に静寂が訪れる。


 その後すぐに、リディアが新たな魔法を紡いだ。

「……これで広場に集まった国民の姿も、共に映せます」


 映像が切り替わり、幹部たちの視線の先に、怒りに震える民衆の姿が映し出された。

 彼らの鋭い眼差しが幹部たちを突き刺す。


 王太子は冷然と告げた。

「お前たちが我が国の民に“尊厳を踏み躙れ”と命じたことは、すでに裏を取ってある。ならば俺は言おう。お前たちの尊厳は――俺が踏み躙る。それが平等だろう?」


 幹部たちは息を呑み、膝を震わせ、やがて項垂れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ