表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/42

第29話 止まる使節団、進まぬ半年間

1 出発のたびに


 ポルトス王都の厩舎。

 威風堂々たる馬車列が並び、豪奢な旗が翻る。


「これよりハイデニアへ向かう!」

 使節団の団長が声を張り上げた。


 ――その直後。

 空から影が落ちた。


「竜だ!」


 小型の竜が群れで降り立ち、馬を威嚇する。

 牙をむき、翼で砂を巻き上げ、列を乱す。

 慌てて兵たちが剣を抜いた瞬間、竜は空へと消え去った。


「……まるで出発を妨げるためだけに現れたようだ」



2 書簡の紛失


 再度の準備。

 使節団が王の書簡を手に厳重に封じ、馬車に積んだ――はずだった。


「な……ない!? 王の署名入りが!」


 誰も触っていない。

 鍵も壊れていない。

 書簡だけが忽然と消えていた。


「これでは向かえん……」

 団長の顔色は土のようにくすんだ。



3 自然の猛威


 三度目の出発。

 王都を出て街道を走ろうとした瞬間、天が裂けた。


 豪雨。

 滝のような雨が馬車を叩き、土道を川に変える。

 馬は嘶き、足を踏み出さなくなった。


「まるで、何かに怯えているようだ……」



4 国内の災厄


 国境へ向かう道中。


 団員の一人が高熱で倒れた。

 次々と咳が広がり、流行病のように団員が動けなくなる。


 別の隊では、出発直前に「王の急な呼び出し」がかかり、国を離れられなくなった。


 また別の日。

 山間の街道で大規模な土砂崩れが発生し、馬車列が押し潰された。命は助かったが、全ての車両が使用不能になった。


 さらに別の隊は、走り出して数刻で――

「車輪が……!?」

 なんと、すべての馬車の車輪が同時に粉々に砕けた。


「呪いだ……!」

 誰かが呻いた。



5 ハイデニア国内で


 ようやく国境を越えた使節団もあった。

 だが待っていたのはさらなる試練。


 雷。

 突然落ちた稲妻が、馬車に直撃した。


 別の一行は盗賊の襲撃に遭った。

 普段なら返り討ちにできる戦力だった。だがその日に限って、盗賊は異様に手際がよく、兵を次々と無力化していった。


 さらに。

 突如として竜巻が道を塞ぎ、街道の木々を根こそぎ薙ぎ払った。


 遠方では、火山が噴火した。

 溶岩が流れ込むわけではなかったが、灰が空を覆い、行軍は不可能となった。



6 ポルトス王の苛立ち


「また失敗だと?」


 王座の間に重く響く声。

 玉座に座るポルトス王は額に青筋を浮かべ、報告に膝をつく使節団を睨みつけた。


「小竜に? 雨に? 土砂崩れに? ……貴様らは旅芸人か!」


 杖を床に叩きつけ、王は立ち上がる。

「勇者すら怯えたあの国を、このまま放置できるものか! 次はもっと人を出せ! 金を出せ! どんな手を使ってでも、必ずたどり着け!」


 だが兵も役人も顔を伏せるばかりだった。

 半年近く繰り返された災厄は、王都の誰もが説明できない現実だったからだ。



7 半年の経過


 こうして、ポルトスがいくら人を代え、経路を変え、準備を整えても――ことごとく失敗した。


「なぜだ……なぜ一度として成功しない……」


 使節団は戻るたびに王の前で膝をつき、震えながら報告した。

 王は声を荒げるが、次第に誰も使節を志願しなくなっていった。


 そして、気づけば半年が過ぎようとしていた。



8 ハイデニアの熱気とユリウスの驚き


 一方、ハイデニア。

 王太子は広場で民に告げた。


「見よ! 超大国の使節団は、いまだ我らの地に足を踏み入れられぬ!」


 人々は拳を突き上げ、歓声を上げた。

「殿下の言葉は現実になる!」「我らの国は守られている!」


 魔族も人間も、胸を張って叫んだ。

「半年で強くなる!」


 その声は大地を震わせ、空へと響いた。


 ユリウスは広場の端で額を押さえた。

(……本当に、ここまで現実になるとは……! もはや“ハッタリ”などという次元ではない。殿下の言葉は、国を、世界を動かしている……)


 その驚きと恐怖に、宰相はしばし声を失っていた。



こうして「王の苛立ち」と「ユリウスの驚き」を入れたことで、

外からは“呪いの国”に見え、

内からは“神の国”に見える対比が強まりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ