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第21話 遺恨を断つ者、魔族をも救う

1 会談の幕開け


王都の大広間。

王と王妃、宰相ユリウス、騎士団長スラウザー、王太子アウグスベルグ。広間の上空には竜の姿でゼノヴァンが旋回している。

対面には魔王と幹部たち。


人間と魔族が同じ卓に座るなど、誰も想像したことはなかった。

兵や民は緊張の面持ちで見守り、場は張りつめていた。



2 奇跡の証


魔王が口を開いた。

「昨日の戦いで倒れた我が同胞、そして傷を負った者たち。すべてが復活していた」


幹部が呻くように続ける。

「信じられぬ……人間の王子の言葉で、我らが蘇るとは……」


「こんな奇跡、見たことも聞いたこともない……」


魔族たちは互いに視線を交わし、畏怖と戸惑いに揺れていた。

彼らにとって、強者は敬うべき存在。だが目の前の男は、力ではなく言葉で奇跡を起こした。


王太子は冷や汗を流しながら胸を張った。

「俺が言った。“遺恨は俺が断つ”と。それだけだ」



3 粛清と許し


すると魔王が立ち上がり、怒りをにじませる。

「昨日、命令を無視し特攻した愚か者がいた。ここで粛清する」


幹部の一人が青ざめてひざまずく。

人間も魔族も息をのんだ。


だが王太子が片手を上げ、静かに言った。

「待て。遺恨は残すな。許せ」


広間に衝撃が走った。

「な……許すだと……?」

「自らを傷つけた相手を……」


幹部はその場に泣き崩れた。

魔族の心に、畏怖が信仰へと変わる音が響いた。



4 従属と対等


魔王は深く頭を下げた。

「我ら魔族は、ここにハイデニアへの従属を誓う」


人間側は騒然とする。

「魔族が……従属……?」


だが王太子は即座に首を振った。

「従属などいらない」


魔王が驚きの目を向ける。

「……なんだと?」


「人を従わせたいと思ったことはない。だから魔族も同じだ。

従属では、いつか必ず不満と亀裂が生まれる。俺が欲しいのは従属じゃない。

共に歩む仲間だ。人も魔族も、対等にだ」


沈黙の後、魔族たちは深く頭を垂れた。

「……主よ」

「我らを対等と呼ぶとは……」

「これほどの懐の広さ……」


初めて「主」という呼び名が口にされ、広間の空気が一変した。



5 人間の反対と受け入れ


ユリウスが苦い声を上げた。

「魔族を受け入れれば、人類諸国すべてが敵に回ります!」


王太子は深く頭を下げた。

「それでも受け入れてくれ。俺の願いだ」


ユリウスは唇を噛み、長い沈黙の末に頷いた。

「……承知しました。殿下の決断に従います」


王もまた、重々しく息を吐いた。

「この奇跡を前にしては、反対はできまい」



6 魔族の真実


魔王は静かに語った。

「我らは戦を好んでいるわけではない。常に迫害され、追われ、隅に押しやられてきた。

憎しみを返すしかなくなったのだ……」


王太子は拳を握りしめ、言い放つ。

「ならば終わらせよう。ここから先は、人も魔族も共に生きるんだ」


その言葉に、魔族たちは涙を流してひれ伏した。

「主よ……我らは命を懸けて共に歩む!」

「主こそ我らの導き手!」


人間も魔族も、王太子を見上げる視線はもはや信仰のそれだった。

アウグスベルグ自身は、心の中で震えていた。

(本当に……俺はただ言っただけなのに……!)


だがその言葉は、国の、そして種族の未来を決定づけたのだった。

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