第20話 遺恨を断つ光
1 戦いの後
翌日、王都の空は灰色の雲に覆われ、重苦しい空気が街を包んでいた。
広場には負傷兵が集められ、呻き声と血の匂いが漂っている。
切断された腕や脚を押さえて泣く者、仲間を失って呆然と座り込む者。
その光景は、昨日の戦いの残酷さを突きつけていた。
「これが……魔族か……」
誰かの呟きに、憎しみと恐怖が混じった。
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2 会議の衝突
王城の会議室。
王と王妃、宰相ユリウス、騎士団長スラウザー、王太子アウグスベルグが集まっていた。
ユリウスが硬い声で言う。
「魔族が近郊に拠点を築き、使者を立ててきました。会談を望んでいます」
王は即座に反対した。
「会談など不要だ! 昨日の犠牲を見よ。許せるものか!」
スラウザーも机を叩いた。
「仲間が死んだんだぞ! 和解など論外だ!」
ユリウスも冷静に言い添える。
「民も納得しないでしょう。殿下、ここで情けをかければ国は崩れます」
重苦しい空気の中、王太子が口を開いた。
「……俺は、会談を受けるべきだと思う」
一斉に反対の声が飛ぶ。
「殿下!」「正気ですか!」
だが彼は迷わなかった。
「このままでは、また同じ悲劇が繰り返される。遺恨は……俺が断つ!」
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3 奇跡
その言葉が響いた瞬間、空が割れた。
厚い雲の間からまばゆい光が降り注ぎ、王都全体を包み込む。
広場に並べられた兵士の遺体が光に覆われ、胸が上下し始める。
「……っ!」
ひとりが息を吹き返し、目を見開いた。隣にいた仲間が涙を流し、叫んだ。
「生きてる! お前、生きてるじゃないか!」
別の兵は失った片脚が再生していくのを呆然と見つめ、やがて声を震わせた。
「……歩ける……俺、また歩けるぞ……!」
腕を失っていた兵が、自分の両手を握りしめて嗚咽した。
「剣が……もう一度、剣が握れる……!」
次々と光に包まれた兵士が息を吹き返し、歓声と涙が広場を覆った。
抱き合い、泣き崩れる姿を見た民衆からも嗚咽が漏れる。
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4 震える心
会議室の窓からその光景を見た王太子は、足がすくんだ。
「な……なぜだ。俺はただ……言っただけなのに……」
背中を汗が流れる。
「俺はただのハッタリだ……こんな奇跡を起こせるような大層な存在じゃない……!」
胸の奥に冷たい恐怖が広がる。
だが外の人々は涙を流し、口々に「殿下万歳!」と叫んでいた。
ユリウスが記録帳を閉じ、震える声で言った。
「遺恨は……断たれました」
スラウザーは涙を拭い、拳を振り上げて笑った。
「殿下! これが俺たちの奇跡だ!」
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5 新たな道
王も目を閉じ、静かに息を吐いた。
「……ここまで見せられては、反対のしようもないな」
ユリウスも頷いた。
「会談を受けましょう。これこそ未来への道です」
王太子はなおも震える心を抑えきれず、天井を見上げた。
(……俺は、本当に何をしてしまったんだ……?)
だが、外からは熱狂が広がっていた。
「殿下万歳! ハイデニア万歳!」
奇跡の光は国全体を包み込み、魔族との会談への道を開いた。




