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第7話 突然の襲撃

「今なら見逃してあげよう。」


それは、余韻に浸る時間を与えない一言だった。


冷たい感触が背中に押し付けられる。


それが銃であることに気づくのとほぼ同時に、俺は全身の毛穴が開くのを感じた。


背後には気配などなかった。


それなのに、この男はあまりにも自然に現れた。


Jが素早く視線を動かし、脱出ルートを探る。


しかし、男は俺だけではなく、アスカとフクロウにも狙いを定めていた。


「お前ら、puppetsに近づきすぎたな。」


静かに、それでいて確実に、状況を掌握しようとする口調だった。


「何者だ?」


俺が冷静を装って尋ねると、男は小さく笑った。


「俺か?ただの下っ端さ。名乗るほどの者じゃない。」


確かに、彼の立ち姿には強者の風格はない。


細身で、どこか頼りなさすら感じる。


しかし、その手元にある銃だけは揺るぎない意志を持っている。


トリガーにかかる指は微動だにせず、まるでそれこそが彼の全てであるかのようだった。


「組織の掟は厳しくてね。俺はただ、お前らが面倒を起こさないようにするだけさ。」


彼の言葉は軽いように聞こえたが、俺たちの動きを封じるには十分なプレッシャーがあった。


フクロウが、少しずつ体勢を低くする。


彼の得意な体術で間合いを詰めるつもりか――だが、男がその動きを察知した。


「動くなよ。」


銃口がわずかに角度を変える。


フクロウはすぐに動きを止めた。


くそ、完全に封じ込められたか。


しかし、俺はすぐに冷静になり、分析を始める。


この男はpuppetsの精鋭ではない。


ただの監視役か、威圧のための要員だろう。


つまり、隙はある。


俺たちは、確実に打開策を見つけられる。


「それで?俺たちに何をしろって言うんだ?」


男が口の端を歪める。


「簡単さ。ここから消えろ。そして二度とpuppetsに関わるな。」


その選択肢はあり得ない。


鬼灯――みずきを救うため、俺たちはここで引き下がるわけにはいかない。


「それは、できない相談だな。」


男が小さく肩をすくめる。


「まあ、そう言うと思ったけどな。」


次の瞬間、俺は覚悟を決める。


彼の集中をわずかに崩すため、言葉を選ばず口を開いた。


「お前もpuppetsにいいように使われてるんだろ?命令に従うしかないってことか。」


男の顔色がわずかに変わる。


ほんの少しの動揺――それこそが突破口だ。


アスカが鋭く動いた。


その反応は一瞬だった。


彼女は足元の瓦礫を蹴り上げ、男の顔のすぐ横に飛ばす。


その予想外の動きに、男の集中が削がれる。


その隙を見て、俺は肩をひねり、銃口を振り切った。


Jが飛び込む。


銃を奪い取るには時間が足りない――だが、それでも男の腕を押さえ込むには十分だった。


フクロウも動き、男の体を壁へと押し付ける。


俺たちは数秒のうちに形勢を逆転させた。


「…ちっ。」


男は苛立ったように舌を打つ。


Jが冷えた目で問いかけた。


「puppetsの情報を吐け。」


男はしばらく沈黙したあと、小さく笑った。


「俺みたいな下っ端に、大事な情報があるわけないだろ。」


彼の言葉は一理あった。


だが、この場で捕らえた以上、無駄にはできない。


「なら、せめて聞かせろ。puppetsは何を企んでる?」


男は俺を一瞥し、口の端を歪めた。


「お前らには想像もつかないさ。」


俺はそれ以上の情報を引き出せないことを悟る。


ならば、ここで取るべき選択肢は一つ。


「撤退するぞ。」


Jが鋭くうなずく。


フクロウが男を縛り上げ、俺たちはその場を離れた。


だが、この対峙によって明らかになったことが一つある。


puppetsは俺たちの動きを完全に把握している――それだけじゃない。


彼らは俺たちが『近づいてはならない何か』に触れようとしていることに、危機感を持ち始めている。


その「何か」は、鬼灯の正体、そして、みずきの過去。


_この戦いはまだ、始まったばかりだった。

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