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第4話 捕食者の影

街は沈黙し、ただ冷たい風が吹いていた。


俺たちは標的の魔法使いがいる場所へ向かい、作戦を開始しようとしていた。


「準備はいいか?」


Jが低く言う。


俺は頷いた。


鬼灯の次の標的は古びた廃工場の一角に身を潜めているという情報を得た。


俺たちは倉庫街の影に隠れ、鬼灯が現れるのを待つ。


「本当に来るの?」


アスカが緊張した声で言う。


「来るさ。やつは命令通りに動く。」


フクロウが冷静に答える。


静寂が続く。


しかし、次の瞬間―― 黒い影が視界の端に現れた。


「来た…!」


俺たちは息を潜める。


黒いフードを纏った人物が、標的へと向かって歩を進める。


その背丈、その歩き方――間違いない。


「鬼灯」だ。


彼女は躊躇なく進み、標的の前で立ち止まった。


そして無言のまま、ゆっくりと手を上げる。


その仕草に昔であった少女の面影を感じ、俺は思わず声を上げた。


「みずき…?」


その瞬間、鬼灯の動きが一瞬だけ止まる。俺はその隙を逃さず、影から飛び出す。


「待て!」


しかし、彼女は何の反応も示さない。ただ冷たい瞳で俺を見つめるだけだった。


「やめろ!」


俺は叫ぶ。しかし、鬼灯は手を動かし、魔法を発動しようとした。


その時―、背後から無数の気配が現れる。


「……!」


俺たちは一瞬で戦闘態勢を取った。


影から、黒い装束を纏った者たちがじわじわと滲み出るように現れる。


「計画が狂った!」


Jが叫ぶ。


「やつら、俺たちを待ち伏せていたのか…?」


フクロウが歯を食いしばる。


アスカがすぐに魔法を放つが、敵兵が散開して攻撃をかわす。


鬼灯はその混乱の中で ただ立ち尽くしていた。


彼女は命令を受けるのを待っている――そう思った瞬間、ダチュラの冷たい声が響いた。


「鬼灯、魔法を発動しろ。」


鬼灯が指を僅かに動かす。


次の瞬間、空気が震え、紅蓮の炎が一気に爆発した。


廃工場は業火に包まれ、灼熱の嵐がすべてを呑み込んだ。


俺たちはとっさに防御魔法を展開する。


しかし、鬼灯の魔法は凄まじく、炎はまるで意志を持つかのように追いかけてくる。


「なんて魔力量だ…!」


Jが歯を食いしばる。


「これが、ただの処刑人の魔法なの?」


アスカが信じられないように言った。


俺は炎の中で鬼灯を見た。


彼女は感情を見せることなく、ただ命令通りに魔法を操っている。


それが異常に思えた。


まるで、彼女自身の意志ではないかのように。


「鬼灯…本当にお前は、自分の意志で戦っているのか?」


俺の言葉に、彼女の動きが一瞬だけ揺らぐ。


だが、それもすぐに消え、炎が一層激しく燃え上がる。


その時、フクロウが叫んだ。


「ウィル!お前の魔法を使え!」


俺は目を見開いた。


フクロウは炎の壁の向こう側で、俺を見つめている。


「お前の魔法なら、この炎を断ち切れる!」


俺は手を強く握りしめた。ここまで俺は魔法を封じてきた。


しかし、この状況では使わざるを得ない。


俺は深く息を吸い、闇属性の魔力を解放する。


次の瞬間、漆黒の刃が炎を裂いた。


鬼灯の炎が俺の魔法に飲み込まれ、燃え広がる力を失う。


周囲が暗闇に包まれる。


俺の魔法は、この光を全て奪う力を持っている。


「やれる…!」


俺は鬼灯を見据えた。


その時、彼女の瞳が微かに揺らぐ。


ほんの僅かだが、確かに変化があった。


俺はその変化に賭けるしかない。


「鬼灯、お前は何者なんだ?」


俺の声は炎の中で響いた。


彼女は沈黙する。


やはり、何かある。


彼女はただの処刑人ではない。


その正体は…?


しかし、ダチュラが冷酷に言い放った。


「撤退だ。」


次の瞬間、鬼灯は足を引き、炎の霧とともに姿を消す。


「待て!」


俺は駆け出そうとする。


しかし、消えた。


鬼灯は闇の中へと溶けていった。


俺はただ、その場に立ち尽くした。


「…あいつは、何者なんだ?」


鬼灯の正体を追うため、俺たちは次の手を考えなければならなかった。

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