第2話 puppets
翌日、俺たちはJの家に集まり、国王から渡された事前調査書を広げていた。
魔法使い狩りに関する情報が載っているが、どの失踪者も年齢、性別、魔法の属性に共通点はなく、事件は無差別に見えた。
「手がかりがないな…」
Jが不満そうに呟く。
アスカも腕を組みながらため息をついた。
「見ていけば何かつながるかもしれないけど、現時点では難しいわね。」
その時、扉が勢いよく開き、フクロウが戻ってきた。
しかし、彼の服は裂け、額には血が滲んでいた。
「遅くなってすまない。首謀者と思われる組織の名簿を入手した。」
そう言いながら、フクロウは俺に茶色い封筒を投げる。
俺はすぐに封を切り、中の書類に目を通す。
そこに書かれていたのは 「puppets」 という裏社会の組織の情報。
この世界の裏で活動する魔法使い狩りのグループであり、魔法使いたちを「処理」するために動いている。
そして、俺の目がある一つの名前 に留まった。
「鬼灯」――その異名は、処刑人として知られる者のものだった。
「この鬼灯ってやつ、首領のダチュラの命令にだけ従う処刑人らしいな。」
俺の言葉にJが封筒を覗き込み、写真を見ながら言う。
「仮面のせいで顔がよくわからないけど…、これ、少女じゃないか?」
アスカも写真を見て頷いた。
「胸ないし、少女でしょ。」
「…アスカ、デリカシーを弁えろ。」
フクロウが紳士的に注意し、アスカは不満げに口を尖らせる。 俺はそんな会話を聞き流しながら、鬼灯の写真をじっと見つめた。
何か、既視感がある。
この顔… この雰囲気… まるで、遠い昔に出会ったことがあるような気がする――。
だが、俺の記憶は曖昧だった。
それが何を意味するのか、まだわからない。
この「鬼灯」という少女に、一体何があったのか?
それを確かめるために、俺たちは次なる行動を決断しなければならなかった。
静かな夜が広がる。
薄暗い街灯の下、俺たちはJの家に集まり、「puppets」に関する新たな情報を整理していた。
魔法使い狩りの裏に潜む組織、そして処刑人――鬼灯の存在。
今日の調査で核心へ迫ることができたが、未だに全貌はつかめていない。
だがフクロウが持ち帰った資料には、ひとつの決定的な情報が載っていた。
「この魔法使いが次に狙われる。」
フクロウは紙の端を指でなぞりながら言った。俺たちはその名前を見つめた。
無意識に、息を呑む。
「この標的…ウィルの魔法と同じ属性を持ってる。」
アスカの言葉に、俺の心臓が跳ねた。 俺と同じ属性の魔法使いが狙われている――これは偶然なのか、それとも何かの意図があるのか?
「これは罠かもしれない。」
フクロウの声は低く、重かった。
「だが、罠だろうとこの機会を逃せば、鬼灯を直接確認することはできないかもしれない。」
Jが口を開く。
「やるしかないだろう。」
俺たちは選択を迫られていた。
このまま鬼灯の情報を集め続けるか?それとも、直接行動に移るか?
「まずは標的になっている魔法使いを探すべきだ。彼が狙われる現場がわかれば、鬼灯の動きをつかめる。」
俺の提案に、Jが頷いた。
「いい案だな。手分けして調査しよう。」
フクロウ、J、アスカ、俺――それぞれ別の情報源を探り、標的となった魔法使いの行方を追うことにな
った。