第六話 浸かれ風呂!
「はぁ・・・思ったよりも、動けたな・・・」
浴場の湯船につかりなが ら、オレはそう呟いた。
先刻初めての戦闘から教会に帰ってきたのだが、そこには屍者の隠蔽を終わらせた黒錠がおり、血の匂いがひどいからと風呂をすすめられて今に至る。
仕事の始まりがオレ達よりはるかに遅かったのにオレ達より早く帰ってきているのは一体どういうことなのだろうか。
直接聞いてもみたのだが意味深に笑うだけで何も発さなかった。
つくづく敵に回したくない男である。
一般家庭よりはるかに広い湯船に浸かりながら先程の初戦闘に思いをはせる。
ブランには良くできたとほめられたが冷静に考えると戦闘中は必死だったせいで周りが見えておらず、ブランにフォローされたシーンが多々あった。
自身の手に目を向けると、そこに残存する命を奪った感触がより顕著に現れる。
屍者・・・死体とは言え動く人型殺したという自責の念が精神ををむしばんでいく。
罪悪感がないと言えば嘘になる。
だからこそ、オレはまだ見ぬ仇を殺すその感覚を自分の中で反芻する。
そうしていくとオレの手からは罪悪感が流され、 代わりに醜い多幸感がオレの身体を支配していく。
憎い憎い憎い憎い。
この感情を忘れるな。
この感触を忘れるな。
お前は正しい。
お前は正しい。
この復讐は至極正しい。
だからこそ、そのための犠牲はあってないようなもの。
気にする必要は、ない。
水面に映るオレの顔は、まるで悪魔のように微笑んでいる。
その瞬間、浴場の扉がカラカラカラと開かれた。
反射的にそちらを見ると、そこにはタオル一枚も付けていないブランの姿があった。
一切の汚れのない純白の裸身を露したブランがそこにおり、細枝のよう でありながら引き締まったスレンダーな身体は妙に色めしかった。
浴場に入ってすぐにオレの存在に気付き、二人は裸身のまま見つめ合う。
世界が静止したような、一瞬であり永遠のような時間。
この空気を何とか破ろうとオレは口を開く。
「け・・」勇気を持って!一歩を踏み出す!
「結講なお手前で・・・」
選択は最悪だった
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ」
―――――――その後、お互いに土下座し合っている姿を黒錠は大笑しながら眺めていた。
お約束、だよなあ!?
黒錠が仕組んだみたいになってるけど純粋な事故である。コミュニケーションが足りなかったが故。
なおこの後黒錠はブランにボコボコにされます。