第一三話 「出会いの日<ウルルン>」
珍しく真面目回が二話続きます、まずはウルルンside。
文章量としては過去最大かな?
第13話 「出会いの日<ウルルン>」
―――本日は特別企画として初仕事、エリさんとの出会いについてお聞かせ願えますか。
「そりゃ誰得なんだよ、皆目見当もつかねぇぞ」
―――HP掲載用ですので特に気になさらずに。
「釈然としねぇけど前回のこともある、覚えてる範囲で答えてやるよ」
ウルルンは机の角に二度ほどキャスターのケースを軽く叩き、慣れた手つきで右手中指と人差し指で一本のタバコを取り出しおもむろに口にくわえると、ライターに持ち替えた左手でキャスターの先端に火を付けた、ウルルンハゆっくりとそのタバコの味を噛み締め息を吐いた。それでようやくウルルンは一息つき、もう一度あの日の回想を始めた。
ウルルンにとってはあの日から思い出せない程ではないがかなりの季節が過ぎたように感じた。ウルルンはいつになく気持ちを落ち着かせ長い茶髪の前髪を一度払い口を開いた。
「エリと最初に会ったのは確かに初仕事の時だった、事前の担当との打ち合わせの際に連絡先はお互い知っていてな、あいつは親切に前日に“よろしくメール”を送ってきやがった。その時のあたしはその連絡先が仕事用だったのかもわかんねぇし訳のわかんねぇノリだったから、こりゃ絶対合わねぇんだろうなって思ったよ。あたしは仕事用の携帯ぐらい作るべきだったなと断ったことを後悔したさ。
当日、あたしが局の受付に行くと随分騒いでる奴がいたんだよ。
「あんた!! 顔写真見せとるやろ!! なんでこれ見てわからんのや!! さっきの人も、その前の人も顔パスで通っとったやないか!! なんであかんのや!!」
「おい、どうした。ちょっと邪魔なんだが」
「ちょっと聞いてくれへんか、この人やな、うちの証明書見せても入れてくれへんのや! “その顔写真では不正の可能性があります”とか言うてな、ホンマ嫌味やで、こっちは朝から二時間掛けてメイクしとるのに、うちは犯罪者の変装と一緒にしてもろた困るっちゅうねん!!」
とんでもない災厄だと思ったよ、口は悪かったが服装は真面目だしヤクザではないとわかった、とりあえず急ぎだったがこのまま放置するわけにもいかずあたしは話しを聞くことにした。
「どこの事務所だ?」
そう言うとその女は証明書を見せてきた、同じ事務所だった、だがその顔写真はあまりにも本人と一致しなかった。
「ぷっっっ」
「なんであんたも笑うんや! そんなにおかしいんか!!」
「お前さん、ホントに鏡見てきたのか? あたしは女だから見分けられないことはねぇけど凄い化粧してんぞ」
「うちの頑張りが・・・・・・」
「頑張り方を誤ったな、事務所同じだから電話掛けるぞ、いいな?」
「初仕事でトラブルやなんて・・・、ホンマは連絡してほしないけど、しゃあないわな」
「初仕事・・・?」
あたしはそのヒントを察して携帯を取り出した、証明書と名前を何度も確認する。
「おい・・・、嘘だろ・・・、何かの間違いだろっ」
だが何度見てもエリの本名と証明書の名前は一致していた。
「おい、こいつはうちの事務所だよ、依頼状もある、いいな?」
受付のおじさんが依頼状を見て急いで頷く、あたしは驚き戸惑っているエリを連れて局を昇った。
「ありがとう・・・ございます。一体、どういうことやの?」
「初仕事ってさっき言ったな」
「うん、言うたで、それがどうしたん?」
「お前さん、あたしの相方だ」
「えっ・・・・・・、えぇぇっっ!!!!」
エリが驚き声を上げるのと同時にエレベーターが到着し、ティキーンと効果音が鳴り扉が開いた。
「・・・・・・これがまぁ、エリとの出会いだな、朝の騒動のおかげか不思議とあたしは緊張しなかった、それはある種幸いなのかもしれないな」
―――そんな事があったんですか・・・、なんともエリさんらしいですね。
「ちなみに化粧はまだ出番まで時間があったから軽く教えたよ。普段通りでいいのにヘンに見栄を張るのがそもそもの原因だがな」
―――やっぱりウルルンさんは優しい方なんですね、それではもう少し続きの話しも聞きたいところですが、今日はこの辺りでインタビューは終了とさせていただきます、ありがとうございました。