25.5センチメートル
「いてっ。」またこけてしまう。184センチもあるのに足のサイズが25.5センチだ、なんてどうしてこんなにもアンバランスなんだろ、と考えしまう。最近はずっとこんなことを考えてしまっている。
仙台駅のペデストリアンデッキを通り、最寄りの駅で降りて、やかましすぎる踏切を同じ時間に渡り切ると、さっきまで大都会にいたなんて思えない住宅街になる。生まれた時からあるコロッケ屋のあの香ばしい匂いはちょっとだけ、子ども時代の記憶に私を呼び戻してくれる。金曜日は決まって、ウイスキーとドライフルーツで夜を楽しむ。「今日は、ニッカセッション《五線譜のウイスキー》にしよう」と、思ったのは毎週末のルーティーンであると言ってしまえば、それまでなのだが今日は少しだけ特別な気持ちな気がする。
ソファーに腰掛けてふと足を見て、また同じことを考えてしまう。こんなにも私が自分の足を見て考えてしまうのはきっと25.5センチだからなのである。
大切なあの人に別れを告げられてからもう3年も経ってしまった。忘れたくても忘れられない、恋愛なんてしなきゃよかった、という気持ちに何度もループして次に進めずにいる。
あの人と同じサイズのスニーカーはもう4年もはいていてくたびれているのだが、もう少しだけ履こうと思う。「なんて言うか、すごい大切な忘れられない人なのだ。」何度もその結論に辿り着いて、また月曜日も朝から働かなければならない。
そんな私を私はだいきらいだ。