もしも、浦島太郎のカメのIQが500(自称)だったら
昔々あるところに一匹のカメがおりました。そのカメは…と、ご本人様が説明するようですよ。
みなさんこんにちは。俺様…ではなく私はカメでございます。種族もカメの名前もカメでございます。
それでは、あなたたちにだけ、私の真意を教えてさんじましょう。実は私定年退職間近のためこうやって浜辺に出て子供達にいじめられることで自分を悲観的に見せ乙姫様からの待遇を良くしてもらおうと思っているんです。しかし、どんなに私が虐められても全然乙姫サマに気にかけてもらえないのです。
と、いうわけで今日も浜辺に転がって、私が買収したいつもの子供たちに虐めてもらいましょう。
とってもかわいそうなカメさん。そんなある日でした。なんと、浦島太郎がいじめっ子を止めたのです。
「これこれ、子供たち。カメさんをいじめたらかわいそうじゃないか。」
浦島太郎の一言で子供たちはすたこらさっさと去っていきました。
(子供たちを買収する値段が高くなるじゃないか。)
そう思ったカメさんでしたが、そんな悪態は全く出さず、人生をかけて培った演技力でお礼を言いました。
「あなたさまのおかげで命が救われました。感謝してもしきれません。」
買収の値段が高くなりそうで悲しいカメさん。ですが、頭のいいカメさんは目的を失いませんでした。最終的な目的は乙姫サマからの待遇を良くしてもらうこと、ということは乙姫サマに恩を売ればいいのではないかと。
頭をフル回転させたカメさん。以前乙姫サマが「地上のイケメンの美男子と結婚したいわ。」と言っていたことを思い出しました。
浦島太郎は美男子にはほど遠いですが、地上の男性を知らない乙姫サマなら、そこら辺の魚よりかっこよければ美男子と言いくるめられるだろうと思いました。作戦実行の時です。
次の日、浦島太郎が浜辺に行くと昨日のカメが待っていました。
「浜辺にいるとまた子供たちにいじめられるよ。海に戻りなさい。」
「昨日はありがとうございました。そのお礼にあなたさまを竜宮城に連れていきたいのですがよろしいでしょうか?」
「竜宮城? 竜宮城ってどこにあるんだい?」
「海の底です。私の背中に乗れば大丈夫です。さあ、行きましょう。」
いわれるがままにカメの背中に乗った浦島太郎。「海の中で息ができる」という初体験と美しい海中の景色を堪能していると竜宮城の入り口に到着しました。
カメに案内されるがままに奥へ進むと、今まで見てきたすべての人よりも美しいお姫様が出迎えてくれました。
「ようこそ、浦島太郎さん。この間はカメさんを助けてくれてありがとうございます。私は乙姫。この竜宮城の主です。お礼に竜宮城を案内します。自分の家だと思ってくつろいでくださいね。」
宴を楽しんだ浦島太郎。「あと一日、あと一日。」といって何日も竜宮城に滞在しています。そして浦島太郎は乙姫様ととても仲良くなりました。
最近のカメさんはにこにこしています。なぜなら浦島太郎と乙姫サマの愛のキューピットとして有名になったからです。皆、自分を見に来るためにはるばる遠方から訪れてきます。乙姫様も気にかけてくれるようになりました。
そう、作戦は順調です。「浦島太郎を地上から連れてきて、乙姫サマに浦島太郎の素晴らしさを説得し、浦島太郎と仲良くさせ、自分は愛のキューピットとして一躍地位とお金を築く。」、説得せずとも二人が仲良くなったのは嬉しい誤算です。このまま順調にいけば二人は結婚し、その二人のシンボル的存在として老後も保証されるかもしれません。
そんな考えから、カメさんは最近幸せです。もう、わざわざ子供たちにいじめられなくてもいいことも、その要因の一つでした。
あと少しで浦島太郎がやってきてから三年のある日、不穏な空気が漂い始めました。浦島太郎が家族の身を案じ始めたのです。もうすぐ乙姫サマが子供を身ごもりそうなそんな時期なのにです。
案じたところで浦島太郎の家族はもうお空の国に行ってしまっていることを浦島太郎は知らないので、日に日に不安を募らせていきました。
カメさんはそれももちろん見越していました。本当は二人が結婚するプランが一番良いのですが、きっとそれはないだろうと思って、三年前から荷造りを始めました。
もし、浦島太郎が地上に帰ってしまえばカメさんは愛のキューピットから一転、乙姫様を悲しみのどん底へ突き落した男を連れてきた悪のカメになってしまいます。そうなってしまえば、老後の幸せな計画は全部消えてしまいます。
ある日、カメさんは乙姫サマに言いました。
「乙姫様、本当に申し訳ございません。私は年を取ってしまい、体を動かすのも大変になってきてしまいました。このままここに居続ければ、皆様方にご迷惑をおかけすることになってしまうでしょう。この竜宮城が名残惜しくてたまらないのですが、以前から言っていた通り、浦島太郎様がこの竜宮城にやってきて三年目の記念日に退職いたします。今まで本当に、ありがとうございました。貴方様から受けた恩は永遠に忘れません。本当にありがとうございました。」
そして、カメさんは今まで培ってきた演技力で最後には見事な涙を流しました。もらい泣きした乙姫様は退職金として老後一生遊んで暮らせる額と、この世界に一つしか存在しないお宝をカメさんに与えました。
計画が順調に進みすぎて嬉しいカメさん。退職日のための荷造りを終わらせました。竜宮城から遠い南国に、老後の屋敷は手配済みです。そこに行くまでに泊まるホテルもファーストクラスを手配しています。大地震がおきた時のためのプランBも用意しています。
ありとあらゆるプランを考えているカメさんは幸せでした。本当に幸せです。
退職日、カメさんは浦島太郎がいなくなる事実に泣き叫ぶ乙姫サマから最後の仕事、「浦島太郎を地上まで届ける。」が課されました。浦島太郎を届けたら「カメさんさよならパーティーを竜宮城で行う」という予定です。
しかし、浦島太郎がいなくなるという事実によって乙姫サマは狂ってしまいました。浦島太郎を届けた後に竜宮城に戻ったら何をされるかわかりません。カメさんは浦島太郎を地上に届けたらそのまま南国に行くことにしました。
もし、この計画がばれたら乙姫サマの逆鱗に触れてしまいます。しかし、もう覚悟は終わりました。素晴らしい生活がカメさんを待っているのです。
退職金や宝を持ったカメさんは浦島太郎を地上に送り届けました。そして乙姫サマにバレないようにそのまま南国の館へ行きました。作戦は成功です。
カメさんは幸せな老後を過ごしましたとさ。
めでたしめでたし
……その後の浦島太郎? カメさんさえハッピーなら、めでたしめでたし。
最後まで読んで下さりありがとうございます。
ピコンと閃いたこのお話。カメは愚直にも自分のIQの数値を信じ続けるようです。
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次もお楽しみに~。




