碧と陽翔とナイフとフォーク
夢を見たことがある。
俺の仮面は完璧ですか。
そう、外した仮面で顔を半分隠しながら、自分が笑って尋ねる夢だ。
恐怖を一切抱かない。
この仮面を創り出せた自分をとても、誇らしく。
いや、この仮面を被って、騙せたことが、とても嬉しいと、妖艶に、そして、無邪気に笑う夢。
仮面が好きだからこそ、尋ねられる質問であり。
自分が好きだからこそ、尋ねられる質問であり。
仮面も自分も好きだからこそ、誇りに思っているからこそ、自然とにじみ出た、笑顔。
いつか、自分も、尋ねられるようになるのだろうか。
「陽翔ちゃん!僕も陽翔ちゃんと恋人になりたいです!よろしくお願いします!」
台所から速足で居間へと向かった碧は、りんごのホットケーキ、マーガリン、メープルシロップが乗ったお盆を、ずずいと陽翔へと差し出した。
「今はまだ、このホットケーキしか、自信のある料理はないけど。これからも、料理。何回も作って。数は少ないかもしれないけど。陽翔ちゃんに。美味しいって言ってもらえる料理を作りたいし。家事も陽翔ちゃんみたいにてきぱきできないし、複数のことを一度にできないけど。昨日よりも、ほんの少しでも、早く、丁寧に、できたいです。陽翔ちゃんと一緒に、いろんなことに喜んで、生きて行きたい、です!」
碧は目を見開いて、じっと、陽翔の目を見つめていたが、お盆にナイフとフォークがないことに気づいて、慌てて台所へと引き返したのであった。
(2024.2.13)




