碧と陽翔と台所
完璧な人などいないと言うくせに。
人は他人に完璧を求める。
人は完璧を求める他人に嫌われたくなくて、失望されたくなくて、完璧を求める。
時には、仮面を被って、完璧を演じる人もいるのだろう。
完璧な自分を求めて。
完璧ではない自分も求めて。
完璧な自分を求めないで。
完璧ではない自分だけを求めて。
怖くなる。
求め続けて、幸福にも与えられ続けて、もっと、と、求めて。
いつしか、与え続けてくれる人を食い尽くしてしまうのではないか。
与え続けてくれる人を、この手で、なくしてしまうのではないか。
(僕は、陽翔ちゃんを、いつか、喰い尽くして、しまう?)
ベッドに仰向けになっていた碧は、読んでいた小説をそっと、ベッドの上に置いた。
(仮面のアオだけじゃなくて、僕自身も、怖い存在、に、)
二人の関係を陽葵と結菜に尋ねられてから、考えていたこと。
恋愛関係になりたいのか、否か。
仮面のアオは、陽翔に好きだから付き合ってほしいと告白した。
どうしても、告白したかった告白を受け入れてほしかった。
けれど、仮面を被っていない自分は、どうなのか。
陽翔に恋している。
けれど、付き合ってほしいと告白するつもりはなかった。
恋人になってほしいと望んではいなかった。
友人でも、同居人でも、何でもいい。
陽翔と一緒に住むことができれば、どんな関係でも、何でもよかった。
「ぼくはあなたの恋人になりたい」
陽翔からの告白に、少しだけ怯えて、同時に、陽翔からの告白に、めちゃくちゃ喜んだ碧は勢いよく立ち上がって、台所へと駆け込んだのであった。
(2024.2.11)




