碧と陽翔と議題
三年前。
陽翔の自宅の平屋にて。
碧と陽翔が、碧の姉である陽葵と、陽翔の母親である結菜に、挨拶をしに行った時のことであった。
長らく陽葵のマンションの部屋を借りていたことへの謝罪と感謝を、陽葵に受け入れられて、碧と陽翔が一緒に住む、これから住む場所を一緒に見つけるという報告を、陽葵と結菜に心配されつつも、盛大に祝福もされてのち。
陽葵と結菜に尋ねられたのだ。
二人の関係を。
友人。
恋人。
同居人。
将来を誓い合った人。
陽葵と結菜に例を挙げられた碧と陽翔は、声をそろえて言った。
一緒に住みたい人。
陽翔は碧に好きだと言った。一緒に住みたいと言った。
陽翔は碧に付き合ってほしいとは、言っていなかった。
仮面のアオは、陽翔に好きだと言った。付き合ってほしいと言った。
陽翔は、仮面のアオが好きだと言った。仮面のアオと付き合わないと言った。
碧は陽翔に一緒に住みたいと言った。
碧は陽翔に好きだとも、付き合ってほしいとも言っていなかった。
『私たちはあなたたちがどんな関係を築いたとしても、応援する。ただ。友人でも単なる同居人でもない場合。恋人、結婚相手だった場合、まだまだ冷たい世間の目や、ほとんど進んでない法整備のせいで、辛い思いをすることがあるかもしれない』
真剣に自分たちのことを考えてくれている陽葵と結菜に、碧と陽翔は正直に答えた。
今は、ただ一緒に住みたいという気持ちしかわからない。
どんな関係を築きたいか、これから考えてみる。
そう、言ったの、だが。
三年後。
「じゃあ、碧さん。考えましょうか」
「はい」
庭と駐車場付きの二階建ての賃貸住居、一階の居間にて。
陽翔と碧は食卓を挟んで椅子に座り向かい合って、話し合おうとしていた。
三年前に考えると言っていた議題。
どんな関係を築きたいのかというそれを。
この三年間、放置していた、それを。
(2024.2.11)




