碧と陽翔と恐怖
『碧さんが嫌でなければ、新しい家を探して、ぼくと一緒に暮らしませんか?』
嫌なわけがない。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
一緒に暮らしたい。
けれど。
碧はぎゅっと、クリスマスツリーの仮面を抱きしめた。
(陽翔ちゃんは僕がいいって言ってくれているのに)
怖い。
怖いのだ。
とっても。
モデルのアオがよかったと、いつか言われるのではないか。
恐怖と不安がどうしたって、拭えない。引っこ抜けない。
きっと恐怖と不安は細かくてしなやかな根となって、身体中にあますところなく広がって、びっちりとびっしりと、しがみついて離さないのだ。
離せないのだ。
こんなものを蔓延らせたまま、一緒に暮らすなんてできない。
(陽翔ちゃんに、失礼だし、嫌な気持ちにもさせる)
怖い不安だと、いつもびくびくした状態で一緒に暮らしたら、その感情は絶対に陽翔に伝わる。
いくら隠そうと頑張ったって、隠し切れない。
嫌だろう、そんなの。
そんな、緊張している人間と暮らすなんて、休められない、ゆったり過ごすことなんてできないだろう。
家がそんな場所になったらダメだ。
(僕がいいって。言ってくれているのに。どうして)
どうして、不安と恐怖を消し去れないのだろう。
陽翔を信じ抜くことができないのだろう。
(こんなダメダメな僕と一緒に暮らすなんて)
絶対ダメだ。
碧は立ち上がると、クリスマスツリーの仮面を抱えたまま台所へと向かったのであった。
(2023.12.10)




