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中学生とモデル




「げ」


 中学校の授業中のことだった。

 あみだくじで決まった職業体験先を見て、陽翔は呻いてしまった。

 母が好きなモデルの専属カメラマンのアシスタントだったのだ。




(空き家を斧で破壊するなんて、時間の無駄。重機でさっさと破壊すればいいのに)


 破壊が目的ではなく、破壊するモデルが目的だとわかっていても、冷めた目を向けずにはいられなかった陽翔は、それでも言われた仕事に反発することなく黙々と屋外での作業を続けていた。

 昼食を挟んで、指示された位置と角度でレフ版や照明を持って立っていたり、ゴミやモデルが破壊したがれき類を拾ったり、モデルに歓声を浴びせたり、渡されたコンパクトデジタルカメラでモデルを撮影してみたり、写真をカメラマンに見せてこうした方がもっとよくなるとアドバイスをもらったり。


 カッコいいと黄色い歓声を浴びせる同級生(女子も男子も)も、カッコいいと雄叫びを上げる専属カメラマンも、正直、洗脳されているのではないかと疑ってしまう。

 どこがカッコいいのだろう。

 ただの破壊イカレ野郎だ。

 写真と同じで犯罪者としか思えない。

 動きが加わって、ますますその感想が強まった。

 近づきたくない人種だ。


(サインをもらうなんて、信じられない)


 ほらおまえももらえよ、なんてキラキラおめめの同級生が誘ってくる。

 あんな怪しさ狂気さ満載のやつのサインなんか持っていたら、何かよからぬ事象を招きそうだ。

 けど。


(………母さんが泣いて喜ぶだろうな)


「お願いします」

「ああ」


 陽翔は同級生が持って来ていたサイン色紙をもらって、モデルに差し出した。

 名前は書くかと問われたので、母親の名前を言った。


「はい」

「ありがとうございます」


(………撮影の時は声が途切れないぐらい口汚い言葉を叫んでいたのに、今は口数が少ないな。もしかして、撮影の時は作っているのかも。まあ。どうでもいいけど)


 帰宅途中に自宅に寄って、母にサイン色紙を渡そう。

 すんごく感激するだろうと考えた陽翔はモデルに小さく頭を下げて、同級生と専属カメラマンの元へと向かったのであった。






「はーるーとーちゃーんー。おーなーかーすーいーたー」


 こんな人間にはなるまい。

 職業体験が終わり、そのまま学校へ戻らず直帰できた陽翔は、母にサイン色紙を渡しては感激の抱擁から逃れ、仮家に戻り、碧のだめだめっぷりを見てさらに碧に対する好感度人間度の数値を一気に下げつつ、冷蔵庫の中身を見て夕飯のメニューを考えるのであった。


「はーるーとーちゃーんー。まあーだあー?」

「………まだですよ」


(絶対にこんな男にはならない)











(2023.10.25)




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