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碧と陽翔と約束




 気を抜くと一気に下がりそうになる眉を頑張って平行にしていた碧は、クリスマスツリーの仮面を抱えたまま、まっすぐに見つめてくる陽翔に言葉を伝えようと口を開いた。

 開いては閉じてまた開いて、閉じた。

 喉に瞬間乾燥させる何かを入れられたみたいだ。

 へばりついて、言葉が出てこない。

 このまま。

 碧は思った。

 出てこない方がいいのかもしれない。


(だって。もう。でも)


 今日以降、陽翔にはもう会わないつもりなのだ。

 だったら別に言わなくてもいいのではないか。

 弱腰な気持ちが前面に出てくる。


(だめだめ。言うんだ。僕!)


「陽翔ちゃん自殺はもうしないから!」


(ああ!これも伝えたいことだけど。これじゃなくて!)


 あわあわと小さな円を描くように両の手を回し始めた碧に、本当ですかと、陽翔は慎重に尋ねた。


「さっきは『多分、もう、しない、と思う』って言ってましたよね。する可能性を示唆してましたよね?」

「うんでも心が変わった!」

「………でもまた心変わりするかもしれませんよね?」

「絶対しない!約束する!」


 ずずいっと、碧は立てた小指を陽翔の目の前に近づけた。


「約束!」

「………」


 約束なんて意味がない。

 ふと過った思考に、ゆっくりと頭を振って、そっと外へと逃がし、碧の小指に小指を絡めた。


「約束!」

「はい。約束です」

「僕もう陽翔ちゃんには二度と会わないから!」

「………はい」

「僕もう陽翔ちゃんの前でモデルのアオになれないから!」

「………はい?」


 よし勢いに乗せて言い切れた。

 ほっと安堵のため息を吐いた碧は陽翔を見て、ぎょっと目を見開いた。

 驚きのあまり、身体も正座のまま飛び跳ねてしまったような気がするのは、気のせいではないと思う。


「あの。陽翔ちゃん。いえ。陽翔、さん?」


 怖い、怖すぎる。鬼だ。般若だ。恐怖と憤激の塊だ。

 ガクガクブルブルと、意図せず震えた。

 陽翔の小指と絡み合った小指以外の全身が。


(え?え?僕、何か、陽翔ちゃんを怒らせること言ったっけ!?)











(2023.12.4)




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