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碧と陽翔と仮面と破壊
ただただ静かに落ちていく。
あがくこともせず。
息を吐きだすこともせず。
この海にくゆるはずだった気泡を飲み込んで。
堕ちて行く。
恐れていたのかもしれない。
モデルのアオだと知られて。
言葉を紡がれることが。
だったら、と。
ずっとアオの仮面を被っていればいい。
そう、言葉を紡がれることを、ただただ、恐れていたのだ。
だから、先手を打ったのかもしれない。
よくよく考えずに、身体は恐怖に縛られて動き出した。
心は少し遅れて、身体の行動を容認した。
いいや。
いいだろう。
あの子の望む俺にずっと。
ずっとアオの仮面を被り続ければいいのだ。
いいや。仮面を被るのではなく本当に、アオだけになればいい。
自堕落な碧とはお別れすればいい。
万事これで、解決する。
(壊された。なんて、何で考えたんだろう?)
陽翔に仮面を破壊されたと、何故そう思ったのか。
陽翔が仮面の破壊を望むはずがないのに。
(仮面に恋しているのに)
いや、ああ、そうか。
仮面に恋をしたくないから、仮面を破壊したのか。
(大丈夫。もう、仮面は)
(2023.11.28)




