表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/64

碧と陽翔ととくとくと




 梅酒とこたつと映画に、五感をすべて注いだ結果。

 陽翔は酔っぱらってしまった。

 の、だろうか。

 酒の高揚感と陽翔の高揚感がぶつかり合っては、冷静さをもたらしたのだろうか。

 碧を前にしても身体の不調を来さなくなった陽翔は、映画が終わると同時にこたつから出した身体を碧へと向けて、座を正した。

 自分に向かい合った陽翔の様子を横目で一瞥した碧はテレビのスイッチを消し、こたつから身体を出して正座になって陽翔に向かい合った。


 しゅんしゅんと加湿器の沸騰音だけが部屋を占める中。

 碧と視線だけを交じらせていた陽翔は、ゆっくりと口を開こうとしたが、その前に碧がやわく片手で陽翔の口をふさいだ。

 陽翔はその手を退かそうとは思わなかった。

 今は。

 梅酒を飲んでいてよかったと思った。

 そうでなければ、心臓や脈やその他身体の生命維持活動の音がとてつもなく活発化して、碧の言葉をまともに聞けそうになかったから。


(本当に)


 本当に、どうして。


(この人を求めているはずなのに、なあ)


 求めているのだ。

 それはもう強く。

 反して、この人ではない違うと訴える声は、とても小さくて。

 搔き消されてもおかしくないはずなのに。

 どうしたって、消えないのだ。

 消えやしないのだ。


「陽翔。もう一度だけ。言う」


 陽翔は小さく頷くと、陽翔の口と碧の掌の開いていた隙間が、ぴったりと埋まった。


「松江陽翔、おまえが好きなので恋人として付き合ってほしい」


 酒の効果は切れたようだ。

 ほんの少しだけ。

 心臓音がほんの少しだけ強く鳴り始めた。

 心地よいと感じられる音だった。

 とくとく。

 とくとくと。











(2023.11.25)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ