表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/64

碧と陽翔と石鹸




 水炊きを食べて身体がぽかぽかになった碧と陽翔は、ちゃちゃっと土鍋や食器などの後片付けを終えて、ゆっくりと別々に風呂に入ると、人をダメにするカーペットの上に置かれたこたつに入り、ちょうどテレビで放送されている海外のファンタジー映画を見ながら、ちょびちょびとお猪口に梅酒を注いで飲み続けていた。


「もう十回くらい見てんのに飽きねえんだよな、不思議と」

「そうですね」


 横並びになってこたつに入っていた碧は、顔を横に向けて陽翔を見つめた。


「………集中してんなあ」


 小声で言ってみても、陽翔の耳には届いていないらしい。

 非現実的なことに興味がないと思っていたが、存外そうでもないようだ。


「牛乳石鹸の匂いがするな」

「………」

「俺も同じ匂いがしてんのか?」

「………」

「シャンプーの匂いの方が濃いはずなのにな。何で石鹸の匂いの方が強いんだろうな?」

「碧さん」

「何だ?」

「放送中はちょっと黙っていてもらえませんか?」


 CMに入った時点で、陽翔は碧へと顔を向けて、険しい表情でそう言った。


「ああ。悪い。もう少し。二時間後、か。デートも終わるだろ。少しでも構ってほしくてな。もう終わるまで黙ってるから安心しろ」

「………碧さん」

「CM終わったぞ」

「はい」


 陽翔が前を向くと、碧もまた前を向いて映画に集中することにした。




(………心臓よ、ぼくの身体よ。すごいぞ。生命維持活動も形も保てているなんて。よく頑張っているな。でもまだだ。映画に集中するんだ。生き延びるんだ。延命だ。梅酒の匂いで誤魔化せ。碧さんの。いやいやいや。違う!ぼく。ぼくの体臭だ。この牛乳石鹸は!くう。隙間が空いているはずなのに、碧さんの体温。いやいやいや違う!こたつ。こたつの熱だから!)


 集中集中だ碧さんを意識するな。

 目を見開いた陽翔は、映画と梅酒とこたつに五感を注いだのであった。











(2023.11.25)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ