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碧と陽翔と水炊き




 お抹茶とうぐいす餅を食べ終えて茶屋から移動、ぶらぶらまったりと日光が顔をのぞかせている間だけ散策してから歴史公園を出て、電車に乗っては降りて、マンション近くのスーパーで夕飯の鍋用の具材を買って、マンションに帰ってきて今。碧と陽翔は鍋の準備をしていた。




(連れ回されるのかと思ったけど。やっぱり疲れているのかな。それとも、碧さんにとってのデートって、ゆったり過ごすことなのかな)


 洗って切った、にんじん、えのきだけ、はくさい、ながねぎ、切った豆腐、水切りした糸こんにゃく、しいたけを水が入った鍋に投入。沸騰してから、海老、鱈、豚肉を入れて、あらかた具材に火が通ったのを確認して、土鍋を鍋掴みで掴み居間の食卓に持って行き、碧が用意してくれたカセットコンロの上に置けば、椅子に座っていた碧が火を点けてくれた。

 ありがとうございますと礼を言うと、陽翔は台所に戻り、残りの具材である帆立、しゅんぎくを持ってきて土鍋に入れ、一分も絶たない内に火を消した。


 今日の鍋は水炊きである。

 タレはポン酢だ。


「陽翔。白米、どれくらいだ?」

「中くらいでお願いします」


 陽翔が椅子に座ると、椅子から立ち上がり食卓の上に置いてある炊飯器の蓋を開けた碧が茶碗に白米をよそって、陽翔に手渡した。


「ありがとうございます」

「ああ」

「あ。そうだ。冷凍庫に丸餅がありましたよね。碧さん。丸餅入れますか?」

「俺が持って来るから、座ってろ」

「ありがとうございます」


 椅子から立ち上がろうとした陽翔にそう言っては、碧は台所へと向かった。

 陽翔は碧の横顔を、背中を見つめて、碧の姿が見えなくなって、ゆっくりと額を食卓に乗せた。

 ひんやりとして気持ちよかった。


(………あ~~~も~~~。もう。もう!)


「惚れ直したか?」


 いつの間に戻ってきたのだろう。

 耳元で囁かれた陽翔は肩も心臓も大きく跳ね上がらせてから、ゆっくりと顔を上げて、両の手を合わせて、いただきますと言い、お玉で豆腐とながねぎと帆立をポン酢が入っているお皿によそった。

 碧もまた陽翔の対面の椅子に座ると、両の手を合わせて、いただきますと言うと、陽翔に丸餅何個入れるかを尋ねた。

 陽翔は二個お願いしますと言った。

 ニヤニヤと笑う碧の顔を努めて、しれっとした顔で見ながら。


「二個な。了解」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 鍋の締めは、うどんだった。

 










(2023.11.23)




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