碧と陽翔とココロア
成人式での陽翔がアオから受けた衝撃告白で盛り上がったのは、ほんの一時。
話題の移り変わりはめちゃくちゃ早いもので、大学でもまったく話題に上がらなくなった一月下旬のことであった。
陽翔が通う大学に突撃してきたのは。
「イヤーン。アンタね。アタイから碧ちゃんを奪ったのは!」
碧専属のカメラマン、ココロアだった。
大学内の喫茶店にて。
みかん、ぽんかん、たんかん、ばんぺいゆ、きんかん、ら・ふらんす、りんご、いちごの季節限定パフェをあっという間に食べ終わったココロアを、気持ちのいい食べっぷりだなあと爽快な気分になりながら見ていた陽翔は温かい珈琲を飲んだ。
「陽翔ちゃん。カワイイわね。どう?碧ちゃんと一緒にアタイだけのモデルにならない?」
ウインクされた陽翔は、申し訳ありませんがなりませんと丁寧に断った。
「イヤーン、断られちゃった」
「ココロアさんは何しに来たんですか?」
とてつもない怖い形相で突進してきたかと思えば、にこにこと笑って喫茶店に連れて行ってと言われて、パフェを食べ終わったら専属のモデルにならないかと誘われて。
文句を言いに来たのか、ただおちょくりに来たのか、品定めに来たのか。
オレンジジュースをストローですすって飲んでから、ココロアはうふふと笑った。
「文句を言いにも来たし、おちょくりにも来た。だって、すんごく悔しかったんだもの。碧ちゃんが陽翔ちゃんを選んだの。そんでもって、陽翔ちゃんは碧ちゃんをフっちゃうし。いやんもう何様って感じぃ。アタイなら嬉し涙流しながらあの逞しい胸に飛び込んじゃうのに~」
「仕方ないですよ。付き合いたくないので」
「ホントにぃ?」
ココロアは目を三日月のように細めた。
「本当です」
「んふふ。アタイには付き合ってもいいって思っているように見えるけどなあ」
「いいえ」
陽翔は余裕のある態度で答えた。
「本当に?」
「はい」
「他に好きな人がいる?」
「交際を想像できる人はいますけど、好きな人かどうかはわかりません」
「モデルをしている碧ちゃんは好き?」
「はい」
「その好きの理由は?」
「身体の絶不調です」
「ふふ。ときめきね」
「そんなやわい言葉で片づけられません」
「そんなに大きく揺さぶられているのに、付き合わないんだ………怖いから?だから、怖くない誰かを選びたい?」
「わかりません」
「そっか。ふふ。やっぱり、陽翔ちゃん。カワイ。マジメに考えているのね。でも」
ココロアは細めた目をかっぴらくと、落雷を背景に負いながら、ダメダメと強い口調で言い放った。
陽翔はむっと眉根を寄せた。
ダメダメと言われる人間ではない。
「いーえ。ダメダメですぅ。陽翔ちゃん。ちょっと碧ちゃんと一回付き合ってみなさい」
「嫌です」
「はーい。即断してもダメですう。アタイの頼みに付き合ってもらいますう」
ココロアが指パッチンすると、どこからともなく現れたのが。
「はーい。今日一日だけアンタたちは恋人同士よ」
うふふと笑ったココロアは陽翔と、そして、碧にウインクを飛ばすのであった。
(2023.11.19)




