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碧と陽翔と挑発




 台所からお茶を持って居間へと来た陽翔は、ソファに座っている碧にお茶を飲むかを尋ねるも、その返答はもらえなかった。


「陽翔。おまえは家に帰れ」

「邪魔ですか?」

「俺をフッた人間と一緒にいたくねえ」

「あの、すごく気になってたんですけど」

「何だ?」

「どうしてぼくに交際を申し込んだんですか?」

「一目惚れしたが、中学生のおまえに告白するわけにもいかねえから、二十歳になるまで待ってた。断られるとは思いもしなかったが」

「すみません」

「つまり、俺は傷心中だ。おまえの顔は見たくねえ」


 顔を背ける碧に、沈黙を貫くと思っていただけに結構話すんだなと新鮮な気持ちを抱きつつ、陽翔は手に持っているまだ温かいお茶を見つめた。


 正直、碧が本当に記憶喪失なのか半信半疑だった。

 理由はさっぱりわからないが、碧は自分がモデルのアオであることを知られたくなかったようだ。

 海の中に入って、自分を消そうとするほどに。

 けれど失敗した。

 生き残るなら、碧を残すより、アオを残したかった。

 つまり。


(仮面を被っている)


 すうっと、陽翔は目を眇めた。

 すうっと、碧は冷気が身体を這うような寒気を感じた。


「碧さん」

「何だよ。さっさと出てけ」

「出て行きませんよ。弟思いの陽葵さんに碧さんのことを頼まれましたから」

「………記憶を取り戻せってか?」


 目が合った瞬間、陽翔は背筋が凍る思いがした。

 流石は、破壊系オラオラモデル。

 殺気を放つのもお手の物らしい。


(………すっげー怖い。けど)


 陽翔は上半身を倒しては、ぐっと碧と距離を縮めた。

 それこそ、鼻尖同士が触れ合うか否かの距離まで。


「よろしくお願いしますね、碧さん」

「こええ顔してんな」


 にっこり笑ったつもりの陽翔へ、碧もまた歯を剥き出しにして挑発的な笑みを向けるのであった。


(………超こえー)











(2023.11.17)




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