表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/64

陽翔とアオと碧と海と声




 あ、もうだめだ、と思った。

 アオが碧だと、よりにもよって陽翔にバレた瞬間。

 もう、終わりだ。

 破壊された仮面はもう、使えない。

 仮面を被れない自分はもう、

 不要である。






「え。ちょ!」


 陽翔は肝を潰した。

 問いかけた瞬間、アオが無言で身体を横に向けたかと思えば、真っ直ぐ歩き出したのだ。

 海へと。

 海の中へと。

 一切躊躇することなく、静かに入って行くのだ。

 まるで海の底が家だと言わんばかりに。

 異様だった。

 全く音がしないのだ。

 海の中に入って行くのに、海とアオの身体がぶつかる音が、波の音が、飛沫の音が。

 水の音が、海の音が、何も。

 海が迎え入れているのか。


「そこは家じゃありませんよ!」


 陽翔は駆け走って海の中に入りアオの腕を掴もうとするが、奇妙なことにすり抜けるのだ。

 腕だけではない。

 肩も腰も足も全身が。


 自覚がないだけで酔っているのか。

 もしくは、これもまた夢なのか。

 この凍てつくような、鋭い痛みさえ伴う海の冷たさも、身体を重くさせ自由に動かせない大海原の恐怖も。夢、なのか。

 距離がどんどん開いていく。

 もう少しで、アオの顔も海の中へと沈んでいく。


「碧さん!」


 悲鳴のように大きな掠れ声が出た。

 怖い。

 ただひたすらに、怖かった。

 失う。

 失ってしまう。


「碧さん!戻って来てよ!碧さん!」




 雪は音を吸収してしまうという。

 だったら海は、音を沈ませてしまうのではないだろうか。

 いや。音から想いを抜き取り、沈ませているのではないだろうか。

 空っぽになってしまった声では、届くはずもないのだ。


「碧さん!」











(2023.11.15)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ