陽翔とアオと碧と破壊
流石は、破壊系オラオラモデル。
六年の月日を経て、その威力はますます強くなっている。
こうやって間近で見られているだけで、徐々に身体が破壊されているような感覚に陥った。
いっそのこと、一気に破壊してくれればいいものの。
この想いも破壊してくれればいい。
そうしたら。
いついつまでも囚われずに済む。
(自由に、)
なれるの、だろうか。
いいや。
恐らくはいつまで経っても。
それこそ死ぬまで。
囚われ続けるのだろう。
それならば。
それならばいっそのこと、その胸に飛び込めばいいではないか。
交際している姿が想像できないのが何だと言うのだ?
交際していく内に、しっくりくることもあるだろう。
そもそも恋をしているのだ。
「陽翔」
その声を聞けただけで、名を呼んでもらえただけで、歓喜に身体が打ち震える。
こんな激流を伴う感情はもう二度と、身の内から誕生することはないだろう。
恐らく、この人の手を取っても、後悔することもないだろう。
翻弄されながらも手を取ってよかったと、思う日がたびたび訪れることだろう。
なのに。
想像できない。
上書きされるのだ。
上書きされては、想像してしまう。
想像できてしまうのだ。
あの人と過ごす生活を。
もしもあの日、何も言わずに姿を消したことが戦略だったのならば。
もしもあの日、芽吹くかわからない種を自分の中に植え付けたとしたら。
その戦略は見事で、花すら開いたと言ってやる。
(………目の錯覚、だろうな。この人が泣きそうだなんて)
泣きそうな顔が、なぜか、重なって見える
あの人の泣きそうな顔だって見たことなど、一度たりともないのに。
口が勝手に動いた。
思考を通じて身体を動かすこの自分が。
全く持って信じられないことである。
「もしかして、あなた、ぼくが中学生の時に一時期一緒に暮らしていた、山鹿碧さん。じゃありませんか?」
そう言った瞬間。
どうしてだろう。
硬い何かが粉々に破壊される音がした。
(2023.11.15)




