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陽翔とアオと満月




 あの人の告白のせいだ。

 午後二時に成人式が終わると、陽翔は友人や見知らぬ人に連れ込まれるようにスタジアムの近くの居酒屋に入って、飲めや食えやの大騒ぎ。

 になるかと思えば、おとしやかに酒を飲んでは料理を食べて、恋話や大学生活、バイト、就活などの話に花を咲かせて、午後九時に解散。

 ここら辺を散歩するからと友人と別れて、スタジアムの近くの海辺へと向かう。


(誰もいないな)


 石階段を降りて、さらさらの砂浜を歩く。

 穏やかな海の波の音を聞きながら、ゆっくりと。

 街灯が設置されていないのに明るいのは、満月のせいだろうか。


『何で告白を断ったの?』


 カッコいいのに。

 金持ちなのに。

 モデルなのに。

 強そうなのに。

 頼りがいがありそうなのに。


 お猪口を片手に乗せながら片手で支えて、カルピスサワーや果実酒など度数の低い酒を飲む友人や見知らぬ人に聞かれた陽翔は、付き合う姿が全く想像できなかったからと答えたのだ。


 付き合ってみたら何か変わって来るんじゃないか。

 とも言われたし。

 もしかして他に好きな人がいるんじゃないか。

 とも訊かれた。


(他に好きな人は、いないけど)


『陽翔ちゃん』


 傍にいてくれたらと、

 思う人なら。


(いや。っていうか、そもそも何でぼくはあの人に告白されたんだ?)


 中学生の職業体験でしか面識はないはず。

 あとは、夢の中でしか。


(もしかして、同じ夢を見ていたとか。運命か!じゃなくて。うーん………母さんがあの人にぼくが恋してるって知らせた、とか?)


 SNSで誰とでも繋がれる時代だが、陽翔も母である結菜もしていないので、ファンレターを送って、あの人がそれを読んで少し気になって調べさせて、優秀な自分を気に入って告白するに至った。とか。


(もしくは、中学生の時に一目惚れされたとか。ははは)


「陽翔」

「へ?」


 陽翔は歩みを止めた。

 真正面にアオが立っていたのだ。












(2023.11.14)




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