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アオと碧と恋




「アオ。お~い」

「アオ様。アオ様」


 アオが一人暮らししている1DKのマンションにて。


 全く反応を示さず椅子に座ったまま項垂れているアオから視線を外し、陽葵と結菜はお互いの顔を見合わせた。

 心なしか、アオが全身真っ白になっているように見えるのは、目の錯覚ではないだろう。

 あんな衆人環視の中で告白して、失恋したのだ。

 自信満々だったのだろう。

 喜色満面になった陽翔から肯定の返事をもらえると信じて疑わなかったのだ。


 アオになると宣言してから本当に、だらしないなまけものの碧に戻ることはせずに、アオの仮面を被り続けた。

 陽翔に色よい返事をもらうために。

 いや。

 陽翔にただ喜んでほしかったのだ。

 それなのにこの結果。


「はるちゃん。アオ様に恋してたんだけどねえ」

「恋していると交際するは同義語じゃないのよね。恋は恋のまま終わらせたいこともあるのよ。恋に恋するってやつ?」

「俺はどうすれば」


 復活したかと思えば、まただんまりしてしまったアオの全身はまだ真っ白だった。

 復活するにはまだまだ時間がかかるらしい。


「もう碧ちゃんに戻ればいいんじゃないかしら?」

「そうそう。碧に戻って、碧として告白すればいいんじゃない?」

「あんなだらしねえ人間を誰が好きになんだよ?」


 あ、また復活した。

 床と平行していた顔面が少しだけ上を向いているような気がする。

 それに、白以外の色がうっすらと浮き出ているような気がしないでもない。


「だらしないってわかっているなら、だらしなくならなければいいだけの話じゃない」


 陽葵が呆れながら言えば、アオは無理だと即答した。

 多分と、付け足した。


「仕事以外動きたくない。多分」

「はるちゃんと一緒だったら?」

「………動く。多分。だが、多分で、陽翔の心は動かせない。つーかそもそも、陽翔は碧に恋をしていない」

「「まあね」」


 陽葵と結菜二人共に即答されたアオは、せっかく少しだけ上げていた顔をまた下げてしまった。


「いいじゃない。恋をしていなくても、交際はできるわよ。で。交際していく内に恋していけばいいのよ」

「意味不明だ。恋をしているから交際するんだろうが」


 陽葵の言葉にアオがそう返せば。


「恋も交際も色々なのよ、アオ様」


 と、結菜に言われたアオは突如として立ち上がり、マンションから飛び出して行ったのであった。


 今はただ、がむしゃらに走りたくなった。

 










(2023.11.14)




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