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陽翔と呪い




 あの日。

 息抜きにと初めて二人で出かけた日。

 国立公園内に建てられた小屋で眠って、喫茶店でモンブランと栗パフェを分け合って食べて、アスレチックコーナーで少し遊んで、一緒にマンションに帰る途中、用事があるからと別れて。それっきりだ。

 六年間、あの人とは一度たりとも会ってはいない。

 どころか、姿も見てはおらず、声すら聞いていない。

 反して、モデルのアオの姿はしょっちゅう見るようになった。

 雑誌で、バスで、電車で、店で、町中で。

 声は聞かない。

 写真ばかりだ。


 目にするたびに、それはもう心臓が暴れ出す。顔は真っ赤になる

 かなり重症だとかなり落ち込む。

 こんな感情に現を抜かすわけにはいかないのだ。

 けれど、写真を見ずに済む方法も、心臓を静める方法の模索も、もう諦めた。

 好きなだけ暴れるがいいさ。好きなだけ赤くなればいいさ。

 放置して自然消滅を狙おう。

 そう思い続けて、何年が過ぎただろうか。

 大人の仲間入りと言われる十八歳になっても、飲酒喫煙が可能な二十歳になっても。

 心臓が未だに暴れ続けているわ、顔は真っ赤になり続けるわ。


 恋は呪いだと誰かが言っていたが、まさにその通りだ。

 玉砕覚悟で告白でもすればこの呪いは解けるのだろうか。

 けれど、モデルに直接告白するなんて、そもそも会えやしないのだからできるはずがない。

 中学生の時に会えたがあれは異例中の異例だ。

 それに何と言っても、この恋の終着点が見えない。

 あのモデルと付き合いたいのだろうか。

 試しに交際姿を想像しては。

 何故か、あのモデルがあの人と入れ替わるという摩訶不思議な現象が起きている。




 あの人に恋はしていないと断言できるはずなのに。

 時々、あの人の姿を探してしまうのだ。


(ぼくは、顔が好みの破壊野郎と、だらしない人間が好きだったのか?)











(2023.11.14)



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