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碧と陽翔と息抜き




 迎えた土曜日。

 秋にしては珍しく汗ばむ陽気だったので、陽翔は半袖のシャツとイージーパンツ、碧は半袖のポロシャツとオーバーオールを着て、出かけたのであった。

 着いてからのお楽しみ、と碧が言ったので、陽翔は碧に黙ってついて行った。

 遊園地、大型ショッピングモール、博物館、美術館、水族館、アスレチックジム、サウナ、温泉、海、森、川などなど。

 どこに行くのか、なんて考えはしなかった。

 こんなことで頭を使いたくなかったからだ。


(一日全部を使って息抜きする必要なんてないのに)


 ちゃんと、一日に数回、頭を休ませる、つまりは、ぼーっとする時間も設けているのだ。

 適度に息抜きはしているのだ。


(心配することないんだよ。母さんも。この人は。母さんに頼まれたから、しょうがなくぼくを連れ出したんだろうけど。まあいいや。脳を休ませるって考えよう)


 いち早く切り替えた陽翔が、とにかく今日はぼーっとする日だと決めて、ただただ碧の後について行くことにした結果。


「よーし。陽翔ちゃん。寝よー」

「………はい」


 国立公園に到着した。

 入場料を百円払って、芝生の上をどんどんどんどん進んで行って、常緑樹の木立の間をどんどんどんどん進んで行った先で待っていたのは。

 秋の便りである紅葉樹に包まれていた、茶室だと思われる茅葺屋根の小さな趣のある小屋であった。

 予約すれば何時間でも自由に使えるんだよ。

 碧がそう言いながら小屋の中に入ると、いきなり寝転んでそう言ったのだ。

 陽翔は素直に碧の隣に寝転んだ。

 幸いここに辿り着くまで汗もかかなかったし、ちょうどいい日当たりと日影さ具合で心地よかったので、風邪をひくこともないだろう。と、ちょっとだけ考えて。


 静かだった。とても。

 心地よかった。とても。

 目を瞑っても大丈夫だと思えた。

 頼りないけれど、この人がいるから。


(モデルのあの人は、すっごく心臓がドキドキするけど。この人は、落ち着く)


 本人が言っていたように、軽いからだろうか。

 ふわふわひらひらと、自由気ままに生きて行く。

 こんな大人にはならないと反面教師にしていたはずなのに。


(もしかして、ぼくってちょろいのかな。りんごの皮でほだされちゃったんだ)











(2023.11.7)




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