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僕とわが家




 書き置きの日よりさらに一週間遅れて帰って来たあの人は言った。

 開口一番に。

 りんごの皮を夜に持って行けなくてごめんなさい。

 やけにしょぼくれた顔で。


「謝る必要はありません。自分で用意していましたから」

「そっか。よかった」


 そんなことはどうでもいいだろ。

 陽翔は正直思った。


(それよりも早く居間の人をダメにするカーペットの上で休めよ。遅れて帰って来たってことは、仕事が長引いたってことだろ。だったらすごく疲れているだろ。早く休めよ)


 陽翔は思ったが伝えずに、手洗いうがいを済ませた碧の手を引いて居間に、そして人をダメにするカーペットの上まで来ると、寝てくださいと言った。


「かけ布団を持ってきますから、早く寝てください」

「あ~うん」


 ホテルでいっぱい眠ったから眠たくはない。

 正直、碧はいいよと断ろうとしたが、陽翔の気迫に押されておとなしく人をダメにするカーペットの上で寝転がった。瞬間、ああ、我が家だと認識した身体から力が抜けた。

 不思議なもので、身体から力が抜けると、そろりそろりと眠気が近づいて来た。


(そっか。風邪もひいてたし、ホテルのベッドだったから、眠っていると思っただけで、そんなに眠れてなかったのかも。あ~~~。あったかい、なあ)


 目をしばたかせた碧は、いい匂いだなとも思った。

 ほんのりみそ汁の匂いがする。

 安心する匂いだ。


「陽翔ちゃん。ありがとう。今日はちゃんとりんごの皮、持って行くから。夜、待っててね」

「はい」


 別に用意しなくてもいいです。

 と、瞬時に浮かんだ断りの言葉をそのまま口にするはずだったが、どうしてか、肯定していた陽翔はけれど、眠ってしまった碧をわざわざ起こして断るのもなあと思って立ち上がり、勉強をする為に客間へと向かったのであった。


「さあって。がんばるか」











(2023.11.3)




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