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おとなとこども




「ね~ちゃ~ん」


 ごめん。

 いつもよりもさらに脱力している声に、姉である陽葵はまったくと呆れた声を出しながら、買って来た風邪薬や冷えピタシート、ペットボトル飲料水、清涼飲料水、ドリンク剤、ゼリーなどが入っているビニール袋をベッドの傍らにある円卓の上に置いた。


 陽葵のマンションから徒歩五分で到着するホテルにて。

 ベッドの上で身体を横にしている碧に、陽葵は食欲はあるのか訊いた。


「ゼリーなら食べられそー」

「はい。じゃあ、起きて」


 円卓の傍にある椅子に座った陽葵は、ビニール袋から桃のゼリーとスプーンを取り出して、ベッドボードと大きな枕に背中を預けて上半身を起こす碧に手渡した。


「ありがとー」

「こぼさないように食べなさいよ」

「うん」

「熱は測ったの?」

「三十九度」

「明日も下がらないようなら病院に行こう」

「病院きら~い」

「嫌いでも行くの。早く家に帰りたいでしょ」

「うん」


 ぽやぽやほわんほわんと答えながら、ちびちびとゼリーを食べる碧の様子を見て、陽葵は本当に二十七歳なのかしらと思ってしまった。


(お酒に弱くて、たった一杯飲んだだけでも、次の日は必ず風邪ひくって。もう治ったと思ってたけど)


 碧から、ヘルプミーと泣きつく電話が久々に来た時は、戦慄が走った。

 もしや、堪え切れずに陽翔に何かしでかしたのではないかと。

 けれど続けてすぐに、お酒飲んで風邪をひいたと聞いて、安堵したのだ。


(陽翔君に何かするって。本気で疑っているわけじゃないけど。恋は魔物。人を変えるし)


「ねえちゃん」


 鼻をかんで丸めたティッシュをゼリーの容器と一緒にゴミ箱に捨てた碧は、陽葵から風邪薬と飲料水を受け取って飲み終えると、起こしていた上半身を布団の中に沈めては、陽葵を見上げて言葉を紡いだ。


「陽翔ちゃん。げんき?」

「ええ。元気よ」

「そっか。よかった………ねえ、ねえちゃん」

「なに?」

「何で、おとなとこどもって区別するんだろうね」

「こどもはまだまだ色々知らないことが多くて、対応できないことが多くて、守る必要があるからよ」

「おとなだって、そんな、おとなじゃないのに」

「でも、こどもの頃よりは、色々知って、色々対応できているでしょ。できないことが多いかもしれないけど」

「………うん。わかってるけどさ~。そんなさ~。壁を造らなくってもいいんじゃないかな~って。おとながさこどもにさ、こどもがさおとなにさ、好きだ~って伝えるのが、いけないことなのかなって、とってもわるいことだって怒られることなのかなって。思っちゃうんだよね~」

「好意を利用して罪を犯す人がいるし。まあ、守るためよ。こどももおとなも」

「ん~~~」

「ほら。眠りなさい。今日は私もこっちに泊まってあげるから。事務所には電話したの?」

「うん。した。ねえちゃん。ありがと」

「復活したら、パフェ食べ放題に連れて行きなさい」

「うん。ん。おやすみ」

「うん。おやすみ」


 陽葵は結菜にラインをして、おでこに冷えピタシートを貼ってあげた碧が眠りに就いたのを確認して、シャワー室へと向かったのであった。

 職場から家と薬局に寄ってホテルに来たのだ。

 着替えなど自分の必要な物は揃っていた。


(シャワーから上がったら、買って来た夕飯を食べよう)


 サンマ弁当だった。











(2023.11.1)




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