アオと陽翔と破壊
これは、尋ねようと頭の中で考えていた質問ではなかった、と思う。
いや、それとも、いつか尋ねたいと胸の内で温めていた質問だったのか。
思いつきだったのか。
ただ、納得はしたのだ。
どちらであろうと、この質問の為に真正面に座ったのだ。
破壊して楽しいですか。
ごちそうさま。
アオが食べ終わるのを待って尋ねた陽翔は、あ、そういえばこの人酔っぱらいだからまともな答えが返って来なかったんだと思い直し、お盆に乗せたままだったので、お盆ごと食器を下げようとした時だった。
アオが言ったのだ。
楽しいな。
陽翔はお盆に触れていた手を食卓の下へと引っ込めて、アオを見た。
「破壊が楽しいなら、撮影の時以外も破壊したいと思っていますか?」
「いいや」
「そうですか。じゃあ、今も破壊したいと思っていないということですか?」
「ああ」
「そうですか」
(犯罪者に見えただけで、犯罪者じゃなかったか)
アオが漂わせるお酒の匂いに当てられたのだろうか。
ふわふわと地に足がついていないように感じた陽翔は、はたと思い直した。
撮影の時以外は破壊したいと思っていないと言ったが、自分を使って砂の山を破壊したではないか、と。
(いや。違った。あれは。夢だった。まったく。こんがらがる。全部)
「ただし。例外もある」
「は?」
紡がれた言葉に目を丸くした陽翔は、いつの間にか隣に立っていたアオに肩を跳ねさせ、続く言葉に、耳鳴りと頭痛が突如として襲いかかった。
「おまえが破壊したいと願えば、俺がいつでも破壊してやる」
「そんなもの、望んでない!」
歯をむき出して大声を出した陽翔に対し、アオはうっそりとことさら凶悪に微笑んで見せたのであった。
(2023.10.30)




