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陽翔と家事




 碧が陽翔にりんごの皮を初めて渡してから、五日後のことだった。

 急遽、県外での撮影の仕事が入ったとの電話を事務所から受けたのは、昼過ぎのことだったので、学校でいない陽翔に向け、居間のテーブルにその旨を書いたメモを置いて、碧は家を後にした。


 一週間の滞在なのだ。

 お土産をたくさん買って来よう。

 移動時間がたくさんあって疲れて買えるかどうかわからないけど。

 そもそも、お土産を買える店があるかどうかも、立ち寄れる時間があるかどうかもわからないけど。

 買えたらいい。

 のほほんと考えた。


(陽翔ちゃん。今のところ不眠もりんごの皮で解消できてるみたいだし。このままずっと眠れたらいいけど)








「やった。これで本当に一人きり。自由だ、って言っても、あの人ほとんど干渉しないから、そもそも自由なんだけど」


 学校から帰って来た陽翔がテーブルに置かれたメモを見て喜んだのも束の間、別にあの人がいようがいまいが、あまり生活環境は変わらないかと思った。


 平日は学校、土日は朝から夕方まで塾だから、ご飯を作るのは朝と夜。

 登校前と塾に行く前に洗濯も済ませて、帰って来てから洗濯物を取り込んで畳んで箪笥に収めて、掃除は勉強の息抜きに夜やって。

 まあそもそも家事をするのは苦じゃなくて勉強の、生活の気分転換になるから、どっちかって言うと好きだし。


 あの人は夕飯時に家にいる時にご飯はまだと催促する以外、話しかけることはほとんどないし。


(不眠解消に、りんごの皮を毎日持って来てくれるけど。どうぞって一言だけで、すぐに部屋から出て行くし。自分でりんごをむいていいんだけど、あの人、持って来てくれるし)


「あ、そっか。今日からあの人が帰って来るまで、自分でりんごをむかなくちゃ」


 客間で制服から私服に着替えた陽翔が、夕ご飯を作るために冷蔵庫を開けた時だった。

 目に飛び込んで来たのが、ビニール袋に入っているりんごの皮だった。

 数えると、七つあった。


「………自分でむくのに」


 陽翔は呆れつつ、ありがとうと呟いた。

 あの人と電話番号もラインも交換してなかったので、帰って来たらちゃんと言おうと思ったのであった。










(2023.10.29)




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