知らんけど
新しい話を考えていたら、長くなりそうだったので、息抜きに書いた短編です。
ネコの「オレ」と一緒に、すっかり全国区になった「知らんけど」をキイワード?に、のんびり散歩気分を楽しんでください。
さあ、いつものパトロール行くで。
破れた金網をくぐって、まずはこっちの路地や。
どや、しっぽピーンと立てて、凛々しいやろ?
まぁ、ここらでオレを知らん奴はおらんな。知らんけど。
なんや誰も見てへんのか、張り切って損したな。
まあええ、この路地抜けたらええとこあるんや。
ほら、土手が見えるやろ。
日当たりええから、寝転んだらぜったい気持ちええで。知らんけど。
ひょういひょいっと身軽に上ったら、キラキラの水が見えるんや。
川、言うやつやな。この前、茶トラのじーさんに聞いたんや。
なんや、魚もおるらしい。
こんだけデカいんやから、捕り放題の食い放題ちゃうか。知らんけど。
チリリリリンって、うわ!えらいとばしとる自転車やないか。
ここ、見晴らしええし風も気持ちええんやけど、たまに危ないねん。
ええ天気やし、景色見ながらのんびりしとったら、黄色のヒラヒラも見えるんやで。
あ、向こうに白いヒラヒラも飛んどるな、ほんなら赤も緑もおるんちゃうか。知らんけど。
ちょっと白いのんと遊んだろ、おい待ってくれ!
………追いかけたのに、届かんとこに行かれてしもた。
まぁええわ、今日はこんくらいにしとったる。
あいつの気が向いたら、オレんとこに遊びにくるやろ。知らんけど。
クールに決めたつもりやったのに、振り向いたら茶色のフサフサがこっちに走って来とる。
飛び上がろうとした瞬間、フサフサが急停止しよった。
全身の毛が逆立つくらいにビックリして、変な声出てもうたやないか。
フサフサを抱き上げてオレから遠ざけながら謝る人間、ええとこあるがな。知らんけど。
まだ心臓がバクバクしとるけど、バレんように背筋伸ばして格好よう歩くで。
ああ、この階段から降りたら歩きやすいねん。
住宅街が続くけど、ここ抜けたら商店街の外れに出るんや。
昔はこの辺も、店がぎょおさんあったらしいで。知らんけど。
ほら、ええ匂いしてきたがな、魚焼いてるんとちゃうか?
ちょっと近寄ってみるか、ここのおっちゃんええ人やねん。
ほらな、ちゃんと挨拶したら美味いもんくれる。
うわ、アツアツやがな、猫舌にはお預け、言う事か?知らんけど。
ちょっと待ったら、ええ感じや。デカいし、めっちゃ美味いやん。
こら、腹もいっぱいになって大満足や、ありがとうな。
あ、怖いおばちゃんが奥で怒っとる。おっちゃんみたいに笑たらええのに。
いっつも怒鳴ってたらブサイクなるし、笑た方がべっぴんやで。知らんけど。
はぁ、食べてすぐ走るのはしんどいな。
あ、ここは上に電車言うのんが走るから、時々ものすごい音がするねん。
まだしんどいけど、怖いからさっさと通り過ぎとこ。
あのゴウゴウいうヤツが、降りてきよったらヤバイしな。知らんけど。
よし、もうすぐいつもの公園や。誰か来とるかな。
おっちゃんと話しするのもええし、シロやブチと遊ぶのもええな。
ワクワクしとったけど、砂場とブランコ、ベンチに人間がおるだけや。
みんな最近会えてへんし、がっかりやわ。集合場所変更したんか?オレ知らんけど!
しゃあない、誰か探してみるわ。
ここが楽しみやから、あのゴウゴウ怖いとこ通って来てるのに、なんでおらんねん。
いや、腐ったらアカン。オレはキリっと格好ようパトロール中や。
べっぴんさんやカワイ子ちゃんが、隠れて見とるかもしれんやろ。知らんけど。
例えば、ココや。出窓のあるマンション。
カーテンの隙間から覗いてる、とかありがちやと思うで。
って、目が合うかもって期待して見上げたけど、誰も見てへんか。
ここは真っ白でシュッとした美人とか、フワフワ長毛のカワイ子ちゃんやろ。知らんけど。
まぁ、そんなドラマみたいな出会いなんか無いわな。
ちょっと気分変えて、高いトコ歩いたろ。
塀に上ったら、同じ景色も見え方が変わるのが楽しいねん。
さっきまで見上げてた窓も、オレより下やで。要するに、オレのが上や。知らんけど。
お、白黒のハチワレが、人間と一緒にこっち見とる。
知らん顔やけど、なんや面白そうなヤツやな。
まぁ、あっちは飼い猫やし、オレとは遊ばれへんねんけど。
せやけど、ホンマ誰も見つけられへん。かくれんぼ大会か?知らんけど。
ほら、家に着いてもうた。
金網くぐった倉庫の裏手が、オレの寝床や。
気が付いたらココに一人やったけど、まぁまぁ気に入ってるんやで。
遊び相手も嫁さんも、毎日パトロールしとったら見つかるやろ。知らんけど。
なんや、疲れたからちょっと寝るわ。
段ボールもボロボロやけど、けっこう暖かくてええベッドやで。
ああそうそう、毛布いうやつ、めっちゃ気持ちええらしいで、憧れるなぁ。
ほんで頭とか背中とか、優しいなでてもろたら最高なんちゃうかな。知らんけど。
ホンマにホンマに、知らんけどな。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。
貴方にとって、息抜きや癒しのお手伝いになりましたら嬉しいです。
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初の長編の設定に四苦八苦しておりますので、たいへん励みになるのです。
また、お会い出来ますように。