表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/36

贖罪

 

「これは、、、確かに酷いな。」とマリーに呼ばれて駆け付けたお父様の開口一番がその一言だった。実際に現状を目の当たりにし少しショックを受けている。



「すまないが、皆の者この離れを片付けてやってくれ。フローレンス少しいいか?」


「?わかりました。」


お父様に連れられ近くのガゼホへ向かいました。


お父様は私が椅子に腰掛けたのを見届けると、自分も腰掛け話し出した。


「まずは謝っておきたい。あれは恐らくアンリエッタの仕業だと思う。済まなかった。」


「あれから、あぁ、フローレンスとハインツ様が出た後、あの2人を問い詰めたんだ。まあ、サマンサは納得したようだったが、アンリエッタはあれからも酷かったよ。ヒステリックに泣き叫ぶばかりで話にならなかった。」と話すお父様の表情もお悩みのようだった。


「恐らくその感情のままお前のあの離れに向かったのだと思う。この件に関しては見過ごすことは出来ない。アンリエッタにも少しお灸を据えようと考えている。」


「そうですか、アンリエッタはどうしてあんなにも私に敵意を向けるのでしょうね?私とアンリエッタがそこまで一緒に居る事もないと言うのに。」


「単純にお前が羨ましいんだろう。」


「え、どうして。私は健康なアンリエッタが羨ましいわ。思い切り走れる体。少しぐらい疲れても平気な体。熱を出す事もない。」と言いながら、自分の体が情けなくなって、ふぅとため息が出た。


・・・・アンリエッタ無いものねだりは良くないわよ。


「まあ、どうこう言っても始まらない。そこで一つ提案があるんだ。」


「お父さんは今のお前の仕事はいい仕事だと考えている。子供たちに夢と希望を与えているのだからな。」


「ありがとうございます。お父様。」心が温かくなるのを感じる。


「この屋敷の近くに私が経営するアパートメントがある。丁度そこの一室が開いたところだ。アトリエだけでもそこへ移さないか?今回はこれで済んだが、これから何かあっても困るだろう?」


「離れはこのまま置いてもらえるのでしょうか?」


「ああ、ここは祖母の大切にしていた楽園だからね。」


「お父様、酷いです。私も大切です。」


「ははは、すまない、すまない。お前が手を入れられない時は、ここは庭師とマリーに任せるよ。それでいいか?」


「はい、わかりました。取り敢えず明日にでもアトリエの引っ越し作業をします。あとでアパートメントのお部屋について詳しく教えてください。」


「ああ、わかったよ。ただ夕食だけは家族で揃って食べたい。その辺は分かってくれるね?」

「はい、分かりましたお父様。」


この間にも離れの方は掃除とリネン類やカーテンの架け替えが済み、元通りの生活が出来るようになった。


ただ、残念な事に壊された絵の具セットは元に戻るわけもなく買い替えを余儀なくされた。

ずっと大切にしていただけあってこの事はフローレンスにとって堪えた。


次の日の朝、フローレンスは朝食を食堂で取っていた。お父様が、家族全員あらかた食べ終わったのを確認すると、その場にいた全員に向かって


「昨日の夜、フローレンスの住む離れが何者かに荒らされた。器物損壊で憲兵の調査を本日付けで依頼する。追って捜査の日が分かり次第連絡する。この件に関しては重く見ており見逃すつもりはない。心当たりのある者は申し出て欲しい。」


お父様が言ったとたんお母様が「そんな憲兵だなんて大げさよ貴方。家の評判にも関わります。どうかおよしになってくださいな。」と笑いながら言い出した。


アンリエッタまでもが「そうよお父様、私の縁談に何かあったらどうするんです?」と言い出す始末だ。



「2人とも何か勘違いをしてないか?」とお父様が2人を見据え話し出した。



「もし、この事が我が家の使用人の口から外に出た場合、一般の人々はどう考えるか少しでも考えた事はあるのか?」


普段穏やかなお父様がここまで声を荒げるのは見た事が無いわ。


「あそこの伯爵家は内部を見ている人間が居ない。と家の中の弱さを指摘される。その意味が分かるか?」


黙り込む2人。


「ここまで言ってもまだ分からないか?」


「自浄作用の無い家なんて他人から見たら付け入る隙だらけだよ。まさしく思う壺だ。

特にサマンサ、お前には失望しているよ。私を支え伯爵家を名乗るのならこれぐらいは分かって欲しいね。」


お父様がそう言った瞬間お母様の顔が真っ赤になりました。女主人としての采配を遠回しに非難しているのです。


アンリエッタはお母様の隣で顔色が真っ青になっていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ