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トラブル・トラブル


サフィノワ家の迎えの馬車はほぼ予定通りに教会へ着いた。


あと少し残す所だけとなった壁画を完成してから帰りたかった。もう一度ここへ来られるんだろうか?

本当なら最後まで描き上げてしまいたい。


心も足も重いフローレンス。一応カーネルさん達ボランティアの関係者には帰郷の事は伝えて置いた。


「フローレンスお嬢様お久しぶりです。」とここへ送ってくれた御者に挨拶された。「ええ、宜しくお願いしますね。」と返すと馬車へと乗り込んだ。



数時間後、馬車はフローレンスの実家の玄関へと到着していた。馬車を降りると懐かしいマリーの姿が見える。「フローレンスお嬢様、お帰りなさいませ。」と涙ぐみながら出迎えてくれた。

「お父様は?」と聞くと「先ほどから書斎でフローレンスお嬢様をお待ちですよ。」とマリーは微笑みながら答えた。


ゆっくりと階段を上がりお父様の書斎へ。


部屋のドアをノックすると「どうぞ」とお父様の声がする。ドアを開けると本棚の前で調べ物をしていたようだ。


「お父様、只今帰りました。」と声を掛けると「お帰りフローレンス。」と優しい笑顔で答えてくれた。


「まぁ、そこにかけなさい。」とソファを薦められた。


「元気そうで何よりだよフローレンス。」とお父様が話し出した。


「お父様もお元気で良かったです。それよりアンリエッタやサマンサお母様はどちらですか?」と聞いてみた。フローレンスのその言葉にお父様は少し表情を崩した。


「・・・・実は今年に入ってから大変だったんだ。」ため息をつきながらお父様が話し出した。


「フローレンス、陛下の具合が悪かったのは知ってたか?」


「はい、あちらでも話題になってましたから。ただ王宮の医療チームが頑張っているとは聞きました。」


「ああ、医療チームは特効薬を作り出し実際に成果をあげている。ただ。。。」


「どうされたのです?」


「その特効薬の主な成分である薬草がシシリー辺境伯の領土で採れる事が分かってきた。それも良質な物だと言う事だ。」


「はい、そこの所は私も聞いていました。」


「実はアンリエッタに縁談が持ち上がっていたんだ。シシリー辺境伯のご子息と。」

 

「えっ、本当にそうなのですか?」


「あぁ、だがその事を新聞記者に嗅ぎつけられ、我が家もしばらくは表を歩く事も出来ず不便を強いられたよ。」


「大変だったんですね。まさか私を呼び戻したのも?」


「そうだ。今は大丈夫だがあちらにまで新聞記者が行き始めたら私の手には追えない。」


「今の状態はアンリエッタとサマンサはクリス侯爵様の口利きもあり、ここから離れたシシリー辺境伯の住まいに早急に移った。アンリエッタがまだ若いので母親も一緒について行き、騒ぎが落ち着くまでの間お世話になっている。」


「お前の今お世話になっている子爵家の方も、手を回して新聞記者が行かないようにしてくれている。今回の件はかなりクリス侯爵様にはお世話になった。」


「そしてここからが本題だが、先日クリス侯爵様と少し話した。どうも街の中でお前の情報が漏れて来ている、状況を考えると、どうも話の出所はアンリエッタだ。」


「――っどうしてそんな!!」


「クリス侯爵、ハインツ様はもちろんそんな方々では無い。以前我が家に来られた時にお前が世の中に出るのは望まない。とあれほどはっきりと言ったのだからな。」


「アンリエッタはお前の名声をあげる事で縁談を組ませようとしたんだろう。よほどこの家から追い出したかったんだろうな。」とお父様はそこまで話すと悲しそうに目を伏せた。


フローレンスの胸中にも重たい鉛のような気持ちが沈んでいた。どうして、どうしてそこまで??

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