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第七十二話
卓也さんと別れて、父と二人で家へと歩いていた。
「アドリブ下手。最悪だったんだけど」
「し、仕方ないだろ。まさか、止められるとは思ってなかったんだ。それに勝手な事をしたら怒るだろ」
「そうだけど。もうちょっと上手くやってよ」
これだから、嫌いなんだ。
何をさせても不器用な父にイライラが隠せない。
「はぁ」
「溜息つかないでよ、緩奈ちゃん」
「キモい。「ちゃん付けしないで」っていつも言ってるでしょ!」
本当に虫唾が走る。
なんで、こんなのが私の父親なのか。
「よかったの?」
「何が?」
「今日会ったあの人の事。別にとやかく言いつもりはないけど、あんな態度をするより、パパも協力的な風にした方が良かったんじゃないかなーって」
「あの人じゃない!卓也さんだって何回言えばわかるの?・・・・余計な事は卓也さんの前で言わないでよ。卓也さんに私の事を心配しておいて欲しいから」




