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第六十六話
「お客様。他のお客様もいますので・・・」
「・・・すいません。ちょっと、ヒートアップしてしまって」
カフェの店員が来て、道徳さんがようやく落ち着いてくれた。
「えっと。何処から話をしましょうか?」
俺は腹を括って包み隠さずに話をするつもりだ。
そもそも、隠す必要がない。
俺が守っていたつもりの家庭は既に崩壊しかけている。
後に残されるのは娘だけだが、妻から慰謝料を貰えば、お金で困る事はないだろう。
つまり、社会的に俺が死ぬことになったとしても、何も問題はない。
「娘さんと会ったのは駅で・・・」
「卓也さん!」
呼ばれた方を振り向くと、緩奈がそこにいた。




