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第五十一話
「はい。そうですか。分かりました」
カラオケルームに備え付けられている、受話器に連絡がきた。
残り時間が迫っている連絡。
やっと、この退屈だった時間から解放される。
「本当に俺しか歌わなかったけど、楽しかった?」
男が心配そうに聞いてくる。
二時間、私は男が歌っている様子を見続けた。
「・・・はい。楽しかったですよ」
少しだけ、考えて嘘をつくことにした。
正直に全然楽しくなかった。と答えても良かったのだが、早くデートを終わりにしたかった。
「じゃあ、次の場所に行こうか?」
「・・・?!」
え。まだ、デートを続けるの?
心の中で驚いているのを男は見透かして言う。
「今日、一日はデートだろ。歌って、お腹も減った事だし、晩御飯食べに行こう」




