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第四十九話
目的の場所に着いたのか、男が立ち止まって店舗前に出されている料金表を確認していた。
「今日、デートする場所ってここなんですか?」
「そうだけど」
男がデートに選んだ場所はカラオケだった。
早速、店のカウンターで部屋を決めている。
・・・嫌だなぁ。
まだ、数回しか顔を合わせたことない男と、二人きりになる場所でデートだなんて。
「どうしたの?もしかして、カラオケ嫌だった?嫌だったら、別の場所にするけど」
嫌そうにしていたのに気づいたのか、男は今更、提案してきた。
そう提案するんだったら、ここに向かう前から、言ってくれればよかったものを。
既に、カラオケルームの番号札までもらっている。
「いえ。大丈夫です」
一回だけ。
このデートさえ、我慢すればいい。
私は嫌だという気持ちを押し殺した。




