第三十七話
玄関には鍵がかかっていたが、美喜が持つ鍵があるので、何の問題もなかった。
音がならないように、細心の注意を払いつつ、ゆっくりと扉を開ける。
「・・で、・・・だよね・・」
リビングから、楽しいそうな男女の会話が聞こえる。
「(こっちの部屋のクローゼットから様子を伺いましょう)」
美喜に連れられる形で、リビングの隣の部屋に位置するクローゼットに身を隠し、二人で息を潜め、クローゼットの壁に耳をあて、リビングでの会話を聞いた。
* * * *
「でね。娘がさ。私の話を全く聞いてくれないのよ。あいつが言う事なら、文句も言わないのに」
私が不満を零すと、彼は優しく「君は悪くない」と言ってくれた。
やっぱり、私の事を味方してくれるのは彼しかいない。だから、そんな彼が愛おしくて、たまらないのだ。
「ちゅ・・む・・」
彼に求められてキスをした。キスをしながら、彼は私の服に手をかけてきた。
「・・・はぁ。あ、ちょっと、だけ、待って」
彼の手を振り払って、私はリビングを後にした。
今、私が付けている下着が、あまり良いものではなかったからである。
確か、隣の部屋のクローゼットに勝負下着がある。




