第三十二話
「分かってるわよ。悪かったわ」
「何が?」
「だから、無理やり美喜を実家に預けた事を怒ってるんでしょ。美喜は今、自分の部屋にいるの?謝って来るから。ただ、私はね。私の母と仲良くして欲しかっただけなの」
俺が怒っているのに気づいて謝罪してきた嫁だが、当然、俺が怒っているのは娘の事だけではない。だが、それをここで言わなかった。嫁の浮気の事については娘から口止めされていたからである。
「・・・あぁ。部屋にいる。凄く怒っていたぞ」
嫁は、娘に謝罪をする為に娘の部屋に向かった。
静かに話を聞くと。
『ごめんなさい。おばちゃんと仲が悪いのを知っていたのに、無理に私の実家に連れて行って。でもね。これだけは分かって欲しいの。ママはね。おばあちゃんと仲良くして欲しかったの』
少し長い時間、話をするのかと思っていたが、意外にもすぐには娘の部屋から出てきた。その後に続く形で娘も部屋から出てきた。
「父さん。私は母さんが謝罪を受け取って、許す事にしたから」
「分かった。娘も一人の人間なんだ。お前の都合に振り回すなよ」
嫁との話し合いは、娘の予定した打ち合わせ通りに終わった。




