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第十一話
あっという間に平日が終わり、気が重い土曜日が来た。
「卓也さーん」
指定した待ち合わせ場所には、緩奈が既に待っいて、俺が歩いて来ているのに気づき、大きくて手を振っていた。
「早速、どこに行くんですか?」
目をキラキラと光らせて、餌を目の前にした子犬の様にこっちを見てくる。
こんなにも期待されているようだが、正直、ほとんどノープランンで何も計画してきていない。
今になって、どうして、昔は妻とあんなにも楽しいデートを出来ていたのだろうと思う。
「それは・・・お楽しみだ」
俺が言葉を濁すと、緩奈は喜んでいた。
「サプライズですね。めちゃくちゃ楽しみです」
しまった。ハードルをより上げてしまった。
テキトーに映画館にでも行くつもりだったのに・・・。
「それじゃあ、行きましょう」
こうして、目的地のないデートが始まった。




