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第百五話
「それで何かあったのか?」
娘からの電話は随分と久しぶりだ。なので、何かあったのではないのかと少し心配であった。
「いや。そろそろかなって思ったんだけど。何もない様子ならいいや」
意味深な言葉を言い残して電話は切られてしまった。
* * * *
「この書類のチャックお願いします」
部下から渡された書類に目を通す。
嬉しいことに、再就職した会社で仕事ぶりを評価され、部下を持てるレベルまでになった。
順調円満に仕事を行っていると。課長から呼び出しを受けた。
何事かと思い、俺は慌てて課長のディスク前に行くと。
「今度、入社する新入社員の一人を君の下に着く予定になったから。・・・実はな。いや。なんでもない。それだけ、だから」
途中、課長が言葉を濁していたのにもっと気をつけるべきだった。