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第百四話
生活基盤を立て直して、数年が経過した。
『ちゃんとご飯は食べてるのか?』
『食べてるよ。お父さんの方こそちゃんと食べてるの?』
娘からかかってきた電話で、心配だと尋ねると逆に心配されてしまった。
もう、娘は家には居なかった。外国の大学へと進学したからである。
初め、海外に留学したいと娘の口から聞かされた時は悩んだ。が、それならと、なんと俺の両親も海外に行くと言い出したのだ。なんでも、死ぬ前に海外での生活をしてみたいとのことだった。なので、留年している間、娘は海外で俺の両親と三人で暮らすことになり、俺は日本に残って、一人暮らしとなったのだ。