第九話
夕食後、美喜に連絡を送ってみた。
すぐに美喜から返信が来た。
『そんなに心配しなくても大丈夫。おばあちゃん仲良くやってる!』
どうやら、問題なさそうでホッとしていた。
「あなた。少しいい?」
急に沙苗が改まって真剣な顔で尋ねて来た。
まさか。と思いつ話を聞く。
「実はさ。私、旅行に行きたいの」
安心した。
今日の事がバレてしまったのかと、内心ドキドキだった。
「そうなのか。えーと。どこに行きたいんだ?考えておくよ」
「違うの」
「え?!」
「私、友達と旅行に行きたいの」
沙苗の話を詳しく聞くと、高校時代の女友達から誘われたから旅行に行きたいのだと。それも二週間かけての長期旅行。
随分と長い旅行だなとは思ったもの、結婚してから沙苗がこんなお願い一度もするなんて事はなかった。そんな沙苗からのお願いだったので、出来る事なら聞いてあげたいと思った。
「別に駄目とは言わないけど。いつから行く予定?」
「えっと、言いずらいんだけど。明日から」
「明日?!美喜はどうする気なんだ。急に会社を有給で休みにする事は出来ないぞ」
「そこは大丈夫。旅行中は私の実家の方で美喜の面倒は見てくれるから。美喜の通っている中学校だって、バスを使えばそこまで遠くないし。ねぇ。お願い」
「・・・分かったよ。明日から二週間、家の事は任せておいて。後、取れるかわからないけど、一応会社に有給申請出してみるよ。取れたら、美喜を引き取りに行くから、その事をお義母さんに伝えておいて貰えないかな」
美喜は嬉しそうに「分かった」と言って、キャリーケースに旅行の準備を始めた。




